「日本語疑問文の通時的・対照言語学的研究」研究発表会 概要

プロジェクト名
日本語疑問文の通時的・対照言語学的研究
リーダー名
金水 敏 (時空間変異研究系 客員教授)
開催期日
平成25年12月7日 (土) 13:00~17:30
平成25年12月8日 (日) 9:00~12:30
開催場所
大阪大学 豊中キャンパス 文学部 中庭会議室 (〒560-8532 大阪府豊中市待兼山町1-5)

平成25年12月7日 (土) 13:00-17:30

13:00-14:00「whと韻律構造から見た佐賀方言における諸現象 ―東京方言との比較を通して―」日高 俊夫 (神戸松蔭言語科学研究所 研修員)

東京方言と異なり,佐賀方言ではwhにアクセント核がなく,whを含む文もフォーカスイントネーションを示さない。このことに関連すると思われる統語的な現象を,東京方言の振舞いと比べながら共通点と相違点を整理し,その理由を考察した。

14:10-15:10「岡山方言の不定語疑問文をめぐって ―対照研究的視点をふまえた記述的一般化―」三宅 知宏 (鶴見大学 教授)

岡山方言の不定語疑問文 (WH疑問文) には,主節の述語が屈折変化し,形態的にはいわゆる仮定形になるという,標準語には見られない興味深い現象が存在する。この現象について,対照研究の視点に基づいた記述を行い,議論をした。

15:10-16:30休憩

16:30-17:30「トルコ語の疑問文―日本語との対照的研究にむけて―」吉村 大樹 (龍谷大学 他 非常勤講師)

トルコ語と日本語はしばしば形態論・統語論の観点からきわめて類似した構造をしていると指摘される。しかし疑問文の構造,とりわけyes-no疑問文の構造に注目すると,トルコ語には疑問接語の生起位置が日本語における機能的に類似した形式「か」と比較して相当自由であること,エコー疑問文を除いてはWH 詞との共起が許されないことなどをはじめとして,様々に興味深い現象が観察される。本発表ではトルコ語における疑問文の振る舞いについて音韻・形態,統語,意味の各レヴェルからその特徴を紹介し,日本語疑問文との対照研究における議論すべきポイントを指摘した。

平成25年12月8日 (日) 9:00-12:30

9:00-10:00「行為指示表現における疑問文の運用の歴史」森 勇太 (関西大学 助教)

現代語には「~ないか」「~んかい」などの否定疑問形による行為指示表現がある。しかし,この形式の運用は,時代や地域 (江戸・東京,上方・関西) で差異が見られる。本発表では,行為指示表現における疑問文の運用の歴史を素描した後,否定疑問形の運用の歴史,およびその地域差について述べた。

10:10-11:10「日本語の不定付加部の構造的・意味的多様性」黒木 邦彦 (啓明大学校 助教)

次のとおり,日本語の不定付加部 (=不定語を含む付加部 (adjunct)) の構造的・意味的多様性は,現代標準語だけを見ても,十分に窺い知れる:

doonazenani=denani=dedoo#sitedoo#jaQte
構造
意味状態,方法理由材料,方法材料,方法,理由理由方法

そこで,本発表では,日本語の不定付加部が構造の面でも意味の面でも多様であることを指摘し,その類型論的研究を立ち上げることの意義を説いた。

11:20-12:20「中世日本語資料の疑問文―疑問詞疑問文と文末助詞との相関―」竹村 明日香 (大阪大学 特任研究員),金水 敏 (国立国語研究所 客員教授)

キリシタン資料や抄物に見られる疑問詞疑問文を調査対象とし,それらと文末助詞 (ゾ・ヤ・カ) との相関性について考察をした。文末助詞が「ゾ」か,又は「ヤ・カ」かの相違により,疑問詞疑問文での言語行為と統語構造が異なる可能性について検討した。