公開シンポジウム:「ことば・認知・インタラクション」 概要

主催
科研費基盤研究(B)
国立国語研究所共同研究
国立情報学研究所共同研究
共催
科研費基盤研究(B)
「会話を通じた相互信頼感形成のマルチモーダル分析と共関心モデルの研究」
開催期日
平成25年2月16日 (土) 13:00~17:30
開催場所
国立情報学研究所 1208,1210会議室

発表概要

13:00-13:10開会挨拶

13:10-13:50講演1 会話における時間:認知と相互行為の調整伝 康晴 (千葉大学 教授)

会話において発話は実時間的に産出され,理解される。そこでは,相互行為に適切なタイミングと認知処理に必要な時間とがさまざまな仕方で調整されている。本発表では,話者交替のタイミングの予測,発話開始部での時間稼ぎ,食事と会話の最適配分といった話題を題材に,会話における時間に関する認知的・相互行為的過程の一端を明らかにした。

14:00-15:00招待講演「みかんよ みかん」構文:定型構文分析により会話メカニズムを考察する岩崎 勝一 (カリフォルニア大学ロサンゼルス校 教授)

情報交換,社会・相互行為的配慮,主観性表出は会話当事者が会話を進めていく上で常に視野に入れておかなければならない重要な課題である。情報交換は主に言語学,関連性理論など,社会・相互行為的配慮は社会言語学,会話分析など,主観性表出は広い意味での語用論などとそれぞれ違った分野での研究が進められている。ここではこのような理論的枠組みから出発するのでなく実際に会話当事者がどのようにして会話という認知論的,相互行為的に複雑な活動を行っているかを観察し会話のメカニズムを総合的に解明する提案を行った。実際には「みかんよ,みかん」という定型構文を分析し,会話当事者に与えられている課題を詳細に検討した。

15:20-16:00講演2 「遡及的連鎖 (レトロ・シークエンス) 」の可能性鈴木 佳奈 (広島国際大学 講師)

本発表では,会話を構成する連鎖構造の一つである「遡及的連鎖 (レトロシークエンス) 」について,実例の分析を通して,その連鎖構造が会話を行うためのリソースとして会話参与者によってどのように利用されているのかを明らかにした。さらに,研究者がこの概念を会話コーパスの構築・分析に利用する際のメリット・デメリットも検討した。

16:00-16:40講演3 話者交替規則の周辺:統語・韻律・視線榎本 美香 (東京工科大学 講師)

Sacksら (1974) の提案している話者交替規則は (a) 発話末周辺で,(b) 話し手に選ばれた者,真っ先に話し出した者が次話者になることを規定している。本発表では,(a) 日本語における助動詞や終助詞の統語的要素,あるいは最終アクセント句周辺の韻律的要素が聞き手に発話末を知らせ,(b) 話し手が視線を向けていた聞き手が優先的に次話者になることを示した。

16:50-17:30総合討論