「複文構文の意味の研究」 研究発表会 概要

プロジェクト名
複文構文の意味の研究 (略称 : 複文構文)
リーダー名
益岡 隆志 (神戸市外国語大学 教授,国立国語研究所 理論構造研究系 客員教授)
開催期日
平成24年9月29日 (土) 13:30~17:00 (開場 13:00~)
開催場所
九州大学国際ホール (福岡市東区箱崎6-10-1)

発表概要

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今回は,3つの研究発表が行なわれた。なお,都合により,予定されていた発表の順序を入れ替えた。

「中立形接続とテ形接続の分化」益岡 隆志 (神戸市外国語大学 / 国立国語研究所 客員)

発表資料 [ PDF | 150KB ]

動詞述語の中立形 (いわゆる連用形) とテ形という2つの接続形式について,それぞれの機能の異同と棲み分けに関する分析を行なった。その分析のなかで接続形式の分化という観点が導入され,基本となるベース形式 (中立形接続) から,それに特定の要素が組み込まれて形成される発展形式 (テ形接続) が派生・分化することが主張された。
フロアからは,連用関係としての「時間」と「継起」の違いをどう捉えるべきか,歴史的な観点を導入する可能性はあるか,といった質問や意見が出された。

「例示を表す並列形式の成立過程」岩田 美穂 (大阪大学 特任研究員)

発表資料 [ PDF | 271KB ]

タリ・ナリ・ヤラ・ダノ・トカなどの例示を表す並列形式のうち,特にダノ・トカという2形式の成立過程について,15世紀以降の資料をもとに分析を行なった。そこでは,ダノ構文は引用を基盤として例示の含意を生じさせたこと,トカ構文は選択の用法から派生して引用句で多用されるようになったこと,などが示された。
フロアからは,全部列挙と一部列挙の解釈の妥当性や選言としての解釈の可能性について意見が出された。

「主節の名詞句と関係づけられる従属節のタイプ」江口 正 (福岡大学)

発表資料 [ PDF | 210KB ]

引用節・間接疑問節・例示並列句・譲歩的並列句・集合操作表現などの要素が,その直後に現れる名詞句と意味的に結びつけられる場合について,統語的および意味的分析を行なった。名詞句に後接する格助詞の有無によって文法性が変わる点などが示され,それらの要素の文法的な位置づけをめぐって議論が展開された。
フロアからは,引用節などと名詞句との順序の逆転可能性や統語的なスコープの範囲の問題について意見が出された。