「大規模方言データの多角的分析」研究発表会 概要

プロジェクト名
大規模方言データの多角的分析 (略称 : 大規模方言データ)
リーダー名
熊谷 康雄 (国立国語研究所 時空間変異研究系 准教授)
開催期日
平成24年8月25日 (土) 10:20~17:20
開催場所
東北大学 文学部 3号館 1階 103演習室

発表概要

「報告と討論 : 大規模方言データの利用と研究」

報告・討論者 :
沖 裕子 (信州大学 教授)
小林 隆 (東北大学大学院 教授)
澤木 幹栄 (信州大学 教授)
竹田 晃子 (国立国語研究所 プロジェクト非常勤研究員)
日高 水穂 (関西大学 教授)
鑓水 兼貴 (国立国語研究所 プロジェクト非常勤研究員)

進行 :
井上 文子 (国立国語研究所 准教授),熊谷 康雄 (国立国語研究所 准教授)

『日本言語地図』データベース (LAJDB) や全国方言談話データベース (DDJD) など,全国規模のデータベースの利用とこのようなデータベースを活用した研究について,異なる分野の研究者の視点から,事例報告と討論を行い大規模方言データの利用と研究について議論した。『日本言語地図』データベースにより『日本言語地図』 (LAJ) の半数の項目を用いて弧例の分布状態を示した「全データの半分で行った孤例の研究」 (澤木幹栄),『日本言語地図』データベースの項目データと属性データを用い,インフォーマントの年齢差の情報を用いて言語地図上で方言語形の変化を探る試み (鑓水兼貴),全国分布資料や東北方言資料を用いた「東北方言における極限のとりたて助詞サエ」 (竹田晃子),全国方言談話データベースを利用し表現法と受話法の方言的特徴について指摘した「大規模自然談話資料の活用可能性」 (沖裕子),全国規模で収集された既存の言語資料と『日本言語地図』や『方言文法全国地図』等を比較対照して問題発見を試みた「全国規模の既存の言語資料を用いた方言研究の試み」 (日高水穂),大規模方言データという観点から「消えゆく日本語方言の記録調査」のデータを用いた「知られざる地域差を探る : 表現法・言語行動,そして発送法」 (小林隆) などの報告があり,コメンテータと参加者を交えた討論が行われた。

『日本言語地図』データベースの構築と計量的探索熊谷 康雄 (国立国語研究所 准教授)

構築を進めている『日本言語地図』データベース (LAJDB) の報告と,『日本言語地図』の計量的分析に向けて現在探索的に行っている事例の中から,併用現象の分布を中心に以下の報告をした。 (1) 『日本言語地図』データベースについて原資料,地図情報の全体の電子化,データベース化などの概要, (2) 3月に報告した2400地点の55項目の併用現象の分布に加えて,地点毎に併称処理が行われたか否かの情報を付加したデータを作成し,地点毎に併用処理の行われた項目数の分布を描き,併用処理の行われた併用回答の分布も合わせて観察できるようにしたことの報告。併用処理の行われた併用の分布は,併用処理語の『日本言語地図』の併用現象の分布と矛盾せず,その中にはまるような分布を示した。この併用現象の分布について報告した。 (3) これまで部分的に『日本言語地図』の3集のみのデータを用いて言語的な類似のネットワーク法による視覚化を試みていたが,『日本言語地図』データベースのデータを用い,併用現象との突き合わせを念頭に整備済みの中から上の併用現象の観察を行ったものと同じ55項目について,ネットワーク法による視覚化を行った。 (4) 方言形成のシミュレーションに向けて検討を続けているが,D. Nettleの方言の発生 (言語的多様性の発生) に関するシミュレーションの再現と検討のために行ったD. Nettleのシミュレーションの再現の報告をした。


コメンテータ : 佐藤 亮一 (国立国語研究所 名誉所員)