近現代日本語における新語・新用法の研究 共同研究発表会の発表内容「概要」
- プロジェクト名
- 近現代日本語における新語・新用法の研究 (略称 : 新語・新用法研究)
- リーダー名
- 新野 直哉 (国立国語研究所 時空間変異研究系 准教授)
- 開催期日
- 平成24年6月10日 (日) 13:30~16:30
- 開催場所
- 国立国語研究所 2階 多目的室
発表概要
「「断然」の受容と展開 ―「全然」の受容と〝迷信〟に言及して―」橋本 行洋 (花園大学 教授)
中国語「断然」の日本語への受容がどのようになされたのかを観察し,先に行った「全然」の場合との対照を行いつつ,日本における近世・近代漢語受容と展開のあり方を再検討した。その結果,従来言われていた明清白話小説からの受容よりもむしろ,程朱学の分野特に『朱子語類』の影響による可能性が認められた。また,「断然」の程度副詞的用法は昭和初期の“モダン語”として取り上げられており,中には「本来否定を伴う」という〝迷信〟もあって,これは後の「全然」の例に先行するものである。
「程度的意味発生の過程の類型 ―程度的意味と量的意味・評価的意味との関わり―」鳴海 伸一 (京都府立大学 講師)
日本語における副詞の意味変化のパターンとして,程度的意味の発生という現象を挙げることができる。もともと程度的意味を持たなかったものが,程度的意味を持つようになるものである。この副詞化によって発生した程度的意味には,どのような過程があるのか。また,それは,程度的意味として,どのように位置づけられるのか。そのような問題意識から,本発表では,拙稿で扱ってきた漢語副詞の具体的事例を中心に,その他類似の事例を合わせて示すことで,意味変化において程度的意味が発生する過程を考察した。その結果,①「量的意味から程度的意味へ」②「程度的意味が評価性を帯びる」③「評価的意味が程度 (度合強調) 性を帯びる」の三つを,程度的意味発生の過程とその類型を考えるための試案として示した。これは,程度的意味の周辺的なものの中で程度的意味を捉え,どのような意味からどのような意味へと変化し得るのかということを通時的視点から理解することをめざしたものである。