「日本語レキシコンの文法的・意味的・形態的特性」研究発表会の概要

プロジェクト名
日本語レキシコンの文法的・意味的・形態的特性 (略称 : 日本語レキシコン)
リーダー名
影山太郎 (国立国語研究所長)
開催期日
平成24年 4月14日 (土) 13:30~17:10
開催場所
名古屋大学 東山キャンパス 全学教育棟北棟406号室 (名古屋市千種区不老町)

発表概要

13:30-14:20「語彙的複合動詞の意味解釈再考 (2) : 補文関係タイプの多様性」由本 陽子

語彙的複合動詞の主要部として様々な動詞と結合することができる動詞の中には,移動や位置変化という方向性を含むものが多いことに注目し,これらが空間的意味場から属性の尺度や時間軸上への意味拡張を起こすに伴って,補文関係と捉えるべき複合動詞を生産的に形成するようになったのではないかという仮説について考察した。

14:20-15:10『「ない」の範疇について』岸本 秀樹

否定の意味を表す「ない」は動詞や形容詞などを否定する文法マーカーとして使用されることもあるが,「動詞+ない」の形態を持つ形容詞にも現れる (例えば,「つまらない」など) 。本論では,これらの用法が,形容詞の脱範疇化と形態素化という別個のプロセスを経て成立したのではないかということを論じた。

休憩10分

15:20-16:10「中国語と日本語におけるV-V複合動詞の考察」沈 力

V-V複合動詞における最大の問題の1つとして挙げられるのは,2セットの項構造が如何に1セットの項構造に組み合わされるかである。ここで日本語と中国語のV-V複合動詞を比べれば,両言語に現れる現象は驚異的に類似している。すなわち,両言語ともにV1の項構造が複合動詞に浸透される場合もあれば,V2の項構造が複合動詞に浸透されることもある。本研究では,V-V複合動詞における項構造の組み合わせは両言語ともに以下の3つの規則に従うことを提案した。
(1) V1とV2が並立関係であれば,両者の項構造が維持されなければならない。
(2) V1とV2が修飾関係であれば,被修飾成分の項構造が維持されなければならない。
(3) V1とV2が補部関係であれば,補部をとる成分の項構造が維持されなければならない。

16:10-16:40「V+V複合動詞を見つめ直す」影山 太郎

これまで想定されてきた統語的複合動詞と語彙的複合動詞の区別や,語彙的複合動詞の意味分類の妥当性を,大量の複合動詞の例に基づいて再検討・再構築した。

16:40-17:10「複合動詞データベースの進捗報告」神崎 享子

プロジェクトで進めているV+V複合動詞リストの作業状況について報告した。

17:10-17:30研究会打ち合わせ

今後のプロジェクト計画