「空間移動表現の類型論と日本語:ダイクシスに焦点を当てた通言語的実験研究」研究発表会 概要

プロジェクト名
空間移動表現の類型論と日本語:ダイクシス表現を含めた総合的対照研究
リーダー名
松本 曜 (神戸大学人文学研究科 教授)
開催期日
平成24年3月27日 (火) 9:30~17:00
開催場所
国立国語研究所 2階 多目的室

発表概要

「Sidaama 語 (エチオピア,クシ語族) のビデオ実験の報告」河内 一博 (防衛大学校 准教授)

2月~3月の Sidaama Zone におけるフィールドワークで行った Sidaama 語のビデオ実験についての報告をした。この言語の実験のデータを形態統語的範疇および意味的範疇に分類する際等に直面している問題を,具体的な事例を挙げて提起し,プロジェクトリーダーの見解をもとに他の言語の研究者も同様に扱うことができるように議論を交わした。

「日本手話の分析」今里 典子 (神戸市立工業高等専門学校 准教授)

研究用映像集Aのうち,移動に関する30の映像を表現した日本手話のデータを分析し,その結果と問題点について報告した。

「イタリア語の実験報告」吉成 裕子 (岐阜大学 准教授),ファビアーナ・アンドレアーニ (ナポリ東洋大学 大学院生)

イタリア語におけるコーディングの特徴や注意点をまとめた。次に,すでに実施済みの映像 A9. 4 実験 (参加者15名) のうち,主体移動についてのみ,結果をまとめて考察した。最後に,今後の課題について述べた。

「フランス語の実験報告」守田 貴弘 (東京大学 特任研究員)

実験ビデオを使ってもフランス語ではほとんど直示動詞の aller,venir が使用されない.この発表では,前置詞句 vers moi (=toward me) による直示表現と,直示動詞が使える場面で頻出する非直示の経路動詞を中心に,フランス語における話者中心の方向表現のあり方を分析した。

「ハンガリー語のダイクシス表現 ―実験映像 A9 を用いて―」江口 清子 (大阪大学 非常勤講師)

国内で計7名のハンガリー語母語話者を対象に行った実験結果を集計,分析した現時点での経過を報告した。また,今後,客体移動,放射移動の表現の実験へと進めていく上で想定されうる問題点を指摘した。