「言語の普遍性及び多様性を司る生得的制約:日本語獲得に基づく実証的研究」ワークショップ概要

プロジェクト名
言語の普遍性及び多様性を司る生得的制約:日本語獲得に基づく実証的研究 (略称 : 日本語獲得研究)
リーダー名
村杉 (斎藤) 恵子 (南山大学)
開催期日
2012年3月7日(水) 10:00~18:00
開催場所
南山大学 名古屋キャンパス L棟 9階 大会議室 (〒466-8673 名古屋市昭和区山里町18)

発表概要

「幼児日本語にみられる属格主語とFinite Headの性質」齋藤 衛 (南山大学)

本研究では,Sawada, Murasugi and Fuji (2010) で検討されている幼児日本語の属格主語について考察を加えた。まず,統語分析により,Finite Head 「の」が限られたコンテクストで属格を認可することを明らかにした。その上で,幼児の属格主語を,このメカニズムをより一般的に適用したものとして捉えることができることを示した。

「日本語の節構造,語彙認可,および,主節不定節現象」岸本 秀樹 (神戸大学)

本発表では,こどもの主節不定詞における副詞の生起に関する現象と大人の文法における節構造のサイズとの関連性について議論した。本論では,特に,副詞の意味関係と節の投射の関係に相関関係があることを論じた。それ以外の語彙要素も,意味により,節内に生起が認可される構造位置が異なることも示した。

「主節不定詞と談話不変化詞から探る幼児の文法構造」村杉 恵子 (南山大学)

本研究では,Luigi Rizziによって1990年代に提案された幼児の構造獲得の過程に関する仮説『Truncation Hypothesis』について検討した。いわゆる「主節不定詞」と談話に関する不変化詞について,対照言語学的立場からメカニズムを検討し,特に日本語を母語とする1歳から2歳の幼児の発話を分析することにより,その仮説が支持される可能性を示唆した。

「普遍的制約の早期発現:日英語における移動現象の獲得から」杉崎 鉱司 (三重大学)

生成文法理論に基づく言語獲得研究の主な成果の一つは,普遍文法の反映と考えられる属性が,観察しうる最初期から言語獲得過程を制約するという様々な証拠を提示してきたことにある。本発表では,日本語におけるwh疑問文および英語におけるyes/no疑問文の獲得に基づき,普遍的制約の早期発現に対する新たな証拠を提示した。

「焦点標識の幼児による解釈について」佐野 哲也 (明治学院大学)

幼児が焦点標識に大人と異なる解釈を与えることがあることがさまざまな言語で観察されている。本発表では,そのようなエラー現象の原因について日本語のデータを中心に扱いながら考察し,そのような現象においても言語の普遍性を司る生得的制約が反映されている可能性を検討した。