「会話の韻律機能に関する実証的研究」研究発表会の概要

プロジェクト名
会話の韻律機能に関する実証的研究 (略称:会話韻律機能)
リーダー名
小磯 花絵 (国立国語研究所 理論・構造研究系 准教授)
開催期日
平成23年12月17日 (土) 14:00~16:30
開催場所
国立国語研究所 3階 セミナー室

発表概要

「『日本語話し言葉コーパス』を用いた会話と独話の韻律特徴の比較 ―句末境界音調に着目して―」小磯 花絵 (国立国語研究所 准教授)

本研究の目的は,『日本語話し言葉コーパス』を用いて同一話者による会話と独話の韻律特徴を比較し,両者の類似点・相違点を明らかにした上で,会話における韻律機能を再検討することである。今回は特に句末境界音調に着目し,統語的な生起環境やF0パターンの比較を行った。

「韻律ラベルを用いた句末境界音調 (BPM) の分析」五十嵐 陽介 (広島大学大学院 文学研究科 准教授)

韻律句 (prosodic phrase) 末尾に生じる音調で,発話の語用論的解釈 (質問,継続,強調) に貢献する音調を,句末境界音調 (Boundary Pitch Movement, 以降BPM) という。『日本語話し言葉コーパス』(CSJ)に採用されている韻律ラベリング体系であるX-JToBIでは,主要なBPMとして4種類が認められている。しかしながら,観察される境界音調を,この4種類のBPMのいずれかに一義的に分類することは必ずしも容易ではない。そもそも日本語にはどのようなBPMがいくつあるのかに関して,研究者の見解は一致していない。本発表では,日本語のBPMの種類と数を確立する課題に取り組むためには,CSJの韻律ラベルをどのように用いて分析を行えばよいかを検討した。

「アクセント句単位のF0パタンの量的特徴」菊池 英明 (早稲田大学 准教授)

アクセント句単位の情報を使って,主にF0パタンの量的特徴について分析する。アクセント句単位内のF0パラメータ,無核句と有核句のBPM生起頻度,句末音調パタンのクラスタリングなどの分析結果を,日本語話し言葉コーパスと多様な音声表現コーパスの間で比較し,それぞれの位置付けを明確にした。

「発話末の到来を聞き手に伝える韻律的特徴」石本 祐一 (国立情報学研究所 特任研究員)

会話において,聞き手は話し手の発話末を予測することで円滑な話者交替を実現していると考えられる。これまでの分析で明らかになった発話末を予測させうる韻律的特徴について報告するとともに『日本語話し言葉コーパス』を用いた分析の展望を述べた。