「首都圏の言語の実態と動向に関する研究」研究発表会発表内容の「概要」

プロジェクト名
首都圏の言語の実態と動向に関する研究 (略称 : 首都圏言語)
リーダー名
三井 はるみ (国立国語研究所 理論・構造研究系)
開催期日
平成23年10月30日 (日) 10:00~13:00 共同研究打ち合わせ会,14:00~16:10 公開研究発表会
開催場所
國學院大學渋谷キャンパス (〒150-8440 東京都渋谷区東4-10-28)
3号館 10階ミーティングルーム (共同研究打ち合わせ会),3号館 3307教室 (公開研究発表会)
渋谷キャンパス アクセスマップ

発表概要

「東京語調査」の概要 ―山手線沿線調査を中心に―竹田 晃子

飛田良文氏が1994-1999年に学生と共に行った首都圏における「東京語調査」の概要について述べ,その中から山手線の沿線31地点・約220人におけるデータをとりあげて地点×世代のグロットグラムを作成し,分析結果を報告した。この調査はこれまで取り上げられる機会の少なかった首都圏における地域差と年代差を追究した貴重な近年のデータであることを指摘しつつ,日本の方言研究における東京方言・共通語の位置づけについて考察した。

講演 : 私のとらえたい東京語飛田 良文

私が東京語の調査をはじめてから,かれこれ50年になります。処女論文が「東京語の連母音『アウ』の成立」 (1961・昭36) でした。東京語の時代区分を成立期・確立期・転成期と考え,成立期は『東京語成立史の研究』 (1992・平4) でまとめました。確立期は国語研究所の『国定読本用語総覧』 (1985・昭60) がその成果であり,戦後の転成期が実践女子短期大学生と共同で行ったJR山手線・中央線・青梅線沿線の三世代調査です。
これらの調査を通して気付いた問題点を,

  1. 東京語と東京弁の定義 (用語の問題)
  2. 東京語と首都圏語との関係 (東京の範囲)
  3. 東京市内の言語調査はあるか (研究史)
  4. 人口移動と東京語との関係 (鉄道・学校教育・結婚・東京人意識)

を中心に検討しました。

指定討論鑓水 兼貴

「首都圏の言語」をめぐっては,多様で重層的な対象のどの面に関心を向けるかによって,相互に関連しながら中心概念の異なる,多くの用語が用いられてきている。地理的な東京方言研究と歴史的な東京語研究の橋渡しを考える立場から,「首都圏の言語」をめぐる概念と用語を手かがりに議論を深めた。