第8回「形容詞節と体言締め文」「節連接へのモーダル的・発話行為的な制限に関する研究」共同研究発表会発表内容の「概要」

プロジェクト名,リーダー名
形容詞節と体言締め文:名詞の文法化 (略称 : 体言締め文)
角田 太作 (国立国語研究所 言語対照研究系 教授)

節連接へのモーダル的・発話行為的な制限に関する研究 (略称 : 五段階)
角田 太作 (国立国語研究所 言語対照研究系 教授)
開催期日
平成23年10月15日 (土) 13:00~19:00
平成23年10月16日 (日) 9:00~15:00
開催場所
国立国語研究所 2階 多目的室

発表概要

平成23年10月15日 (土)

挨拶 プロジェクトリーダー : 角田 太作

(1) 挨拶。
(2) 事務的な連絡など。

「タイ語における体言締め文」高橋 清子 (神田外語大学)

タイ語の体言締め文の意味的,形態的,および統語的な側面を考察した。

「ダパ語における五段階」白井 聡子 (名古屋工業大学)

ダパ語における五段階を,原因・理由節,条件節,譲歩節について,考察した。

「ビルマ語における五段階」加藤 昌彦 (大阪大学)

ビルマ語における五段階を,原因・理由節,条件節,譲歩節について,考察した。

「階層構造モデルの比較と検証 ―テンス・アスペクト・モダリティ・ムードを中心に」ハイコ・ナロック (東北大学 / 国立国語研究所)

五段階との関連において,文法研究における様々な階層構造モデルを検討した。

全体質疑応答

平成23年10月16日 (日)

挨拶 プロジェクトリーダー : 角田 太作

昨日の発表と討論の結果を簡単にまとめた。

「日本語水海道方言における五段階」佐々木 冠 (札幌学院大学)

日本語水海道方言における五段階を,原因・理由節,条件節,譲歩節について,考察した。

「タガログ語における五段階」平野 尊識 (山口大学)

タガログ語における五段階を,原因・理由節,条件節,譲歩節について,考察した。

「モンゴル語における五段階」梅谷 博之 (東京大学)

モンゴル語における五段階を,原因・理由節,条件節,譲歩節について,考察する。

全体質疑応答

プロジェクトリーダーの総括

今回も,二つのテーマともに,大きな進展があった。この二つのプロジェクトの研究成果が素晴らしい論文集として結実することは疑い無いと思う。
具体的には,下記などの進展があった。

1. 体言締め文

タイ語のある構文は従来,受動文と分析されてきた。しかし,この構文は実は日本語などの体言締め文としている特徴もあることが判明した。この構文を体言締め文の一種と見ることによって,タイ語文法研究に新しい分析を提案できる。

2. 五段階

以下のことなどが,明らかになった。
(1) レベル2とレベル3を分ける理由がビルマ語 (加藤) に見つかった。
(2) レベル4について
ビルマ語とタガログ語では,レベル4の文は,そのままでは言えない,または,言いにくい。しかし,actually (ビルマ語 : 逆接,レベル4) またはperhaps (タガログ語 : 原因・理由,条件,レベル4) に当たる語を入れると,言えるようになる,または,言いやすくなる。
(3) 条件の文
条件の文が言えるかどうかは,以下が関係している。
nDrapa語 (レベル2) : 世界・社会についての知識。
水海道方言 (レベル1) : 必然性。
モンゴル語 (レベル4) :話者の判断と一般社会の判断。
この三つには共通性がありそうだ。
(4) 従属節マーカーの数
以下の順番にならべられる。少なくとも,下記の二つのタイプがある。

原因・理由条件逆接 (または譲歩) 言語
A型最も多い最も少ないビルマ語,
ワロゴ語
B型最も少ない最も多いnDrapa,
ナーナイ語,
サハ語

Koenigなど,先行研究によると,幼児は従属節を以下の順番で習得するそうだ。
原因・理由 >  条件  > 逆接 (または譲歩)
今の段階では,下記の仮説が考えられる。

(a) 人間の言語では,従属節マーカーが無い文は,放っておくと,原因・理由と解釈する,または,解釈しやすい。
(b) A型:原因・理由のマーカーが最も多い言語
従属節マーカーの数は,習得の順番を反映する。
習得の順番は出来事の認識しやすさを反映する。
原因・理由は認識しやすい。逆接 (または譲歩) は認識しにくい。
即ち,A型の言語には認識しやすい出来事を表現するマーカーが最も多い。
(c) B型:逆接 (または譲歩) のマーカーが最も多い言語
従属節マーカーを使わなくても意味が分かる場合,即ち,原因・理由の場合は,マーカーが無い。
従属節マーカーが無いと意味が分からない場合,即ち,逆接 (または譲歩) の場合には,マーカーがある。
(d) A型になるか,B型になるかは,competing motivationsの問題である。