多文化共生社会における日本語教育研究 研究発表会開催概要
- プロジェクト名,リーダー名
- 多文化共生社会における日本語教育研究迫田 久美子 (国立国語研究所 日本語教育研究・情報センター 客員教授)
- サブプロジェクト名,リーダー名
- 学習者の言語環境と日本語の習得過程に関する研究迫田 久美子 (国立国語研究所 日本語教育研究・情報センター 客員教授)
- 開催期日
- 平成23年11月13日 (日) 13:00~16:30
- 開催場所
- 国立国語研究所 2階 多目的室
テーマ「学習者コーパスを活用した外国語教育研究」 発表概要
開会挨拶とプロジェクト説明
研究発表日本語学習者の「の」の脱落から見えてくるもの ―コーパスと文法性判断テストの分析から―奥野 由紀子 (横浜国立大学 准教授)
本発表では「の」の脱落による誤用をターゲットとしてその要因を探ろうと試みた。まず,複数の母語を対象とした作文及び発話コーパスから,母語にかかわらず生じる誤用であり,そこには学習者特有のストラテジーが関与していることを示した。しかし上のレベルになるにつれ漢字圏学習者により多く見られることから,韓国語と中国語を母語とする上級日本語学習者に対して文法性判断テストによる調査を実施し,母語の漢語複合語に関する知識が影響している可能性を指摘した。また韓国語母語話者の誤用判断では母語の知識を利用した学習者の回答方略が関与している可能性を指摘し,従来の「正と負の転移」の枠組みでは説明しきれない母語の影響の一端を報告した。
特別講義学習者コーパス研究の現状と課題 ―英語学習者コーパスを例に―杉浦 正利 (名古屋大学 教授)
学習者コーパスを使った第二言語 (外国語) の習得研究は,1990年代より始まった。本講演では,第二言語習得研究のための学習者コーパスという観点から,英語学習者を対象とした代表的なコーパスである International Corpus of Learner English (ICLE) と,NICT JLE Corpus をとりあげ,それぞれのコーパスの成り立ちと特徴を説明するとともに,これらのコーパスを使って,これまでにどのような研究が行われてきたかを概観した。その後で,第二言語習得研究を目的とした学習者コーパスの構築例として,Nagoya Interlanguage Corpus of English (NICE) について,その構築デザインと,構築にあたっての具体的な経緯を紹介するとともに,このNICEを利用した第二言語習得研究の事例をいくつか紹介した。最後に,学習者コーパス研究の課題として,学習者コーパスを使った誤用分析について実例をもとに説明した。