「訓点資料の構造化記述」研究発表会発表内容の「概要」
- プロジェクト名
- 訓点資料の構造化記述
- リーダー名
- 高田 智和 (国立国語研究所 理論・構造研究系 准教授)
- 開催期日
- 平成23年7月9日 (土) 10:00~12:00
- 開催場所
- 韓国 ソウル大学校
発表概要
「国語研本『金剛頂一切如來眞實攝大乘現證大教王經』の漢字字体」高田 智和 (国立国語研究所)
国語研本『金剛頂一切如來眞實攝大乘現證大教王經』巻第一に出現する漢字字体を分析し,「漢字字体規範データベース (HNG) 」の各地域・各時代の標準字体との比較・照合を通して,国語研本『金剛頂經』の書写年代の検討を行なった。初唐標準字体 (長安宮廷写経『妙法蓮華經』巻第五 (671年写今西本) ・同巻第三 (675年書写守屋本) より抽出) と開成石経標準字体 (837年刻『論語』『周易』 (東洋文庫拓本) より抽出) とで字体変遷が見られる42字種について,国語研本『金剛頂經』巻第一の出現字体を精査すると,概ね初唐標準字体を用いていることが明らかになった。よって,漢字字体の面から,国語研本『金剛頂經』の書写は,日本に初等標準字体が定着した奈良時代以降,宋版による開成石経標準字体の影響が見られ始める院政期以前の間と推定される。
「韓国ソウルにおける「漢文訓読研究会」の活動 (2006年~) について」呉 美寧 (韓国 崇実大学校)
漢文訓読研究会は,漢籍や仏典など東洋の古典を日本の訓点資料を主なテキストして研究しながら,韓国の国語史資料である口訣資料および諺解などと比較して講読する研究会である。2006年6月から始まり,この夏で満5年となる。日本と韓国の漢文訓読資料,両方を解読できる研究者を養成し,東アジア漢文訓読研究に寄与できることを目標として,発表者が中心となり活動を開始した。当初は韓国の国語学者―特に口訣学会の同年代の若い研究者―や日本語学の研究者,そして大学院生を対象に,日本の漢文訓読の基礎を身につけることから始まった。最初のテキストは『論語』の訓点本で,参加者は10名。『論語』の通読を2回終えた段階では,メンバー全員,日本の漢文訓読の基礎を習得し,現代日本語の実力も向上していた。その後,『小学』『六祖法宝檀経』を勉強し,現在は『華厳経』の8世紀訓点資料の解読・研究を行なっている。