「方言の形成過程解明のための全国方言調査」共同研究会発表内容の「概要」

プロジェクト名
方言の形成過程解明のための全国方言調査 (略称 : 方言分布)
リーダー名
大西 拓一郎 (国立国語研究所 時空間変異研究系 教授)
開催期日
平成22年12月19日 (日) 15:00~16:00
開催場所
国立国語研究所 2階 多目的室

発表概要

「全国方言分布調査」データベースの概要と利用法鑓水 兼貴

本発表は「全国方言分布調査」のデータベースの概要と利用法について解説・検討するものである。
言語地理学的調査の結果を表すのに適した書式にするため,データは調査項目単位ではなく,地点 (厳密には話者) 単位で作成する。すなわち1人の話者の回答データは1つの XML ファイルから構成される。利用者から見た場合には調査票を再現する形となる。
発表では,各調査者が,調査終了後に実際にデータを作成し,利用するまでに必要な操作について示す。利用者が XML 形式に直接触れることは少ないが,XML タグの仕様についても解説する。
実例としては,試験的に「全国方言分布準備調査」と「方言文法全国地図 (GAJ)」のデータを本発表におけるデータベース形式に変換したものを示す。そして,これらのデータのフォーマットの加工や,任意のデータを取り出す方法について解説する。

「方言分布の経年比較 ―分布はどう動くか?―」小林 隆

この共同研究プロジェクトの主要な目的として,方言周圏論などによる従来型の推論や仮説に基づく解釈を,具体データで検証するということを掲げている。このため,『日本言語地図』や『方言文法全国地図』と同一の項目を現在において再調査し,両者の経年比較を行うことをひとつの手法として設定する。今回の発表では,このような方言分布の経年比較という方法について,他の資料を使った試みも含めて全体的に整理し,その有効性について検討した。また,現代以前 (主として近世以降) の分布と現代の分布との比較などを踏まえて,方言分布はどう動くかという問題について考えてみた。その結果,伝播のあり方として,新しい形式が古い形式を,順次,先へ押し出すように伝わる様子が見られること,新しく生まれた方言にも地を這うような伝播様式が認められること,現代の伝播様式の特徴として,飛び火的・拡散的伝播が目立つようになっていること,共通語の広まり方にも一定の地理的傾向が見られること,などが明らかになった。