「通時コーパスの設計」研究発表会発表内容「概要」

プロジェクト名
通時コーパスの設計 (略称 : 通時コーパス)
リーダー名
近藤 泰弘 (国立国語研究所 言語資源研究系 客員教授)
開催期日
平成22年9月20日 (月) 13:00~16:30
開催場所
国立国語研究所 2階 多目的室

発表概要

近世後期江戸語における副詞「必ず」について ―否定と呼応する場合を中心に―岡部 嘉幸 (千葉大学 文学部 准教授)

本発表では,近世後期江戸語に見られる女房「そう仕なせへ。必 (かならす) 好男を持なさんな。」 (浮世風呂) のような否定表現と呼応する「必ず」 (以下,否定呼応型と呼ぶ) を中心とした副詞「必ず」の使用実態についてコーパスを利用して調査した。また,江戸語と対照する観点から,近代語 (明治後期~大正初期) ,現代語における使用実態についても調査し,否定表現と呼応する「必ず」 の時代的変遷も素描した。

江戸語での使用実態 :
江戸語における「否定呼応型」の「必ず」には「禁止型」 (必ず~するな) と「意志型」 (必ず~するまい) があり,調査資料におけるその使用率は61%であった。ただし,使用率には資料による偏りも見られた。

時代的変遷 :
江戸語での使用率が5割を超えていた「否定呼応型」の「必ず」は,近代語段階でも少ないながら使用が見られる (使用率7.5%) 。しかし,現代語においてはその使用が見られず,副詞「必ず」は一種の「肯定極性」表現へと変化していったと考えられる。