「大規模方言データの多角的分析」研究発表会発表内容「概要」

プロジェクト名
大規模方言データの多角的分析 (略称 : 大規模方言データ)
リーダー名
熊谷 康雄 (国立国語研究所 時空間変異研究系 准教授)
開催期日
平成22年7月17日 (土) 14:40~16:30
開催場所
国立国語研究所 2階 多目的室

発表概要

「『日本言語地図』による方言分布データの計量的研究の探索」熊谷 康雄 (国立国語研究所)

計量的なアプローチによれば方言分布はどのように捉えられ,取り扱うことができるか,『日本言語地図』のデータを用いた探索的な試みの報告をした。言語地理学的分析において,語の分布の地理的な連続性は分析の基本にあり,言語地図のデータ処理・計量的な研究においも重要である。この分布の連続性の取り扱いのひとつとして,計算機上で,語の分布において地理的に連続した領域を認識し,分割,ラベル付する方法について初期段階の試みの報告をした。『日本言語地図』データベース中の語形を例とし,計量的方言区画のための「ネットワーク法」において地点の隣接関係の近似的表現として用いている Delaunay net (幾何学的な意味において自然な隣接地点同士を結ぶネットワーク) を用い,ネットワーク上で語の分布が連続する領域の分割,ラベリングをする手順と実行結果を示した。また,今後の展開についての見通しのいくつかを述べた。

「『全国方言談話データベース』を用いた表現法の地域差の分析試論」井上 文子 (国立国語研究所)

全国規模の方言データを活用して,地理的分布,形態的変異,使用実態を把握し,社会的属性,場面差,世代差,機能差などの観点から方言間比較をおこない,日本語方言における表現法の地域差について分析を試みようとしている。
表現法のひとつとして,間投助詞を対象とし,各地方言における間投助詞の多様性について予備的考察を開始した。
『方言文法全国地図』に現れる間投助詞の形式を整理し,全国の地理的分布を概観した。間投助詞「ナ」「ノ」「ネ」については,場面による使い分けの一端にも言及した。
また,『全国方言談話データベース』の各地点で使われている間投助詞「ナ」「ノ」「ネ」「サ」「ヨ」「ヤ」について,秋田県湯沢市,東京都台東区,奈良県五條市,愛媛県松山市,鹿児島県揖宿郡頴娃町における出現状況を報告した。