「訓点資料の構造化記述」研究発表会 概要
- プロジェクト名
- 訓点資料の構造化記述
- リーダー名
- 高田 智和 (国立国語研究所 理論・構造研究系 准教授)
- 開催期日
- 平成22年5月24日 (月) 09:00~12:00
- 開催場所
- 京都テルサ 第5会議室 (京都府京都市南区東九条下殿田町70)
発表概要
国立国語研究所蔵『金剛頂一切如來眞實攝大乘現證大教王經』について高田 智和 (国立国語研究所)
国立国語研究所が所蔵している『金剛頂一切如來眞實攝大乘現證大教王經』の書誌概要は次のとおりである。巻子本三巻。楮紙黄染。総裏打。各巻とも巻首部分が一部欠損しており,欠損部分が後補されている。墨界。界高19.8cm。界幅1.8cm。一紙28行乃至29行。一行17字。紙数は巻上18紙,巻中17紙,巻下18紙。書写年代は平安時代初期と推定される。また,嘉應2年 (1170年) の奥書 (巻上「嘉應二年十月十四日於東小田原來迎院移點畢/金剛佛子蓮惠」) を持つ白点が存している。ヲコト点は喜多院点。和訓や仮名音注はそれほど多くはない。注釈書による注記もわずかに見られる。このほかに,少数ながら,墨点と朱点も存する。これらは,白点以降の加点と考えられる。
訓点の整理と資料の共有を目的とするデジタル画像データの利用について岡本 隆明 (立命館大学)
人文学研究において,従来の紙媒体の資料だけではなく,デジタル化されたデータも利用されるようになっている。しかし,歴史学のような,文献資料を扱う,長年の蓄積のある研究分野では,広く研究の基盤となるデジタルデータとはどのようなものかという点について,なお共通の認識や理解がないように思う。報告者は,従来より作成・利用されてきたテキストデータと画像データとを文字単位で関連付け,どの資料のどこにどのような文字があるのか,という整理をすすめることが必要であり,このレベルでの整理があってはじめて,デジタル化されたデータが従来の紙媒体の資料をこえる研究の基盤になりうると考えている。報告では,そのようなデータをいかに作成・蓄積していくのか,個々の研究者がそのような基盤となるデータの整備にどのように関わるのか,について述べた。