(オンライン) シンポジウム 「日本語教育は,自然会話コーパスで変わる! ―『BTSJ日本語自然会話コーパス』の特徴と日本語教育への生かし方―」

プロジェクト名,リーダー名
日本語学習者のコミュニケーションの多角的解明
石黒 圭 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 教授)
班名,リーダー名
日本語学習者の日本語使用の解明
宇佐美 まゆみ (国立国語研究所 日本語教育研究領域 教授)
主催
国立国語研究所 機関拠点型基幹研究プロジェクト 『日本語学習者のコミュニケーションの多角的解明』
共催
「日本語学習者の日本語理解の解明」 石黒 圭 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 教授)
科研費基盤 (A) 「語用論的分析のための日本語1000人自然会話コーパスの構築とその多角的研究」 (研究代表者 : 宇佐美 まゆみ)
言語社会心理学研究会 (SPLaD)
開催期日
2020年11月21日 (土) 10:00~17:00
開催場所
Web開催
お申し込み方法
人数把握のため,事前申し込みをお願いします。
詳細はお申し込みについてをご覧ください。

概要

現在,『BTSJ日本語自然会話コーパス』の公開が順次行われています。現在は,初対面会話,友人との雑談,教師と学生の面談場面などを含む377会話が収録されています。この大規模な自然会話コーパスは,会話条件を統制して収集されているという特徴と,「談話の流れ」や,「発話の重なり」,「笑い」,「沈黙」など,会話という相互作用の流れが記載されているという特徴を踏まえて,談話レベルの語用論的な分析を行うのに適しています。

談話の流れを踏まえた相互作用の実態を多角的に解明し,日本語教育における自然なコミュニケーション能力の養成に生かすことが,これからの日本語教育において,一層,重視されていきます。これまでの成果の一部は,このコーパスを活用した研究論文集もまとめられていますが (以下参照),このコーパスに収められている自然会話は,海外における「日本語語用論」の授業や,日本語自体の授業においても用いられています。

そこで,今回のシンポジウムでは,『BTSJ日本語自然会話コーパス』の活用法をより多くの人に知っていただくことを目的としたプログラムを企画しました。第一部として,まずは,「自然会話とプロフィシェンシー」を考えるための話題提供を行っていただいた後,その内容も踏まえて『BTSJ日本語自然会話コーパス (2020年版) 』 の特徴と活用法を,特に,フォルダ別に分けてある意味と,会話データ以外の貴重な情報が含まれている「会話データ情報一覧シート」を中心に,解説します。さらに第二部では,実際にこのBTSJコーパスを用いた研究を講演,発表という形で報告します。

『BTSJ日本語自然会話コーパス』の活用によって,ディスコース・マーカーなどの語用論的研究や,未だ解明の余地が残っている「談話レベルの現象」の習得研究,日本語教育における学習者への指導法など,プロフィシェンシーの養成と教育に新たな可能性を提案することを目指します。

【参考書】
宇佐美まゆみ (編) (2020a) 『自然会話分析への語用論的アプローチ ―BTSJコーパスを利用して―』 ひつじ書房,2020.3.10刊
宇佐美まゆみ (編) (2020b) 『日本語の自然会話分析 ―BTSJから見たコミュニケーションの解明―』 くろしお出版,2020.10.1刊

プログラム

10:00~10:10 趣旨説明

宇佐美 まゆみ (国立国語研究所 教授)

10:10~12:00第一部 自然会話とプロフィシェンシーを考える

10:10~11:00 特別講演「自然発話とプロフィシェンシー : 「文脈の文型化」と「文型の文脈化」に絡めて」 鎌田 修 (元南山大学 教授)

語学教育にとって自然な発話ほど魅力的なものはない。生の日本語,英語,フランス語等々,自然な発話に魅了されてその学習を始めるものは少なくない。そして,生魚を食する習慣のある日本文化の一部である日本語の学習にとって「生」の日本語は必要不可欠の要素と言えよう。しかし,いざ,「自然な」発話,また,「生」の発話とは何かに答えることは容易なことではない。そのような問題意識のもと,本講演では,次の課題を提示し,『BTSJ日本語自然会話コーパス』,及び,他のデータを観察しながら,私見を呈することにする。

  1. 自然発話,生の発話,生きた発話について : 言語接触の観点から
  2. 自然発話の使用,理解を前提にしたことばの運用力 (プロフィシェンシー) とは何か
  3. プロフィシェンシーの涵養はどのようなプロセスを経るか (1) : 文脈の文型化
  4. プロフィシェンシーの涵養はどのようなプロセスを経るか (2) : 文型の文脈化
  5. みんなのプロフィシェンシー : 「分かり合える日本語」の構築をめざして

11:00~11:05休憩 (5分)

11:05~12:00 「『BTSJ日本語自然会話コーパス (2020年版) 』 の特徴と活用方法 ―「フォルダの意味」と「会話データ情報一覧シート」を中心に―」 宇佐美 まゆみ (国立国語研究所 教授)

本コーパスの最大の特徴は,①条件統制して収集された会話群が,フォルダごとにまとまって提供されていること (フォルダ内のデータを比較分析することが基本) ②発話の重なりや沈黙なども記する,語用論的分析に適した文字化の原則である『基本的な文字化の原則 (BTSJ: Basic Transcription for Japanese) 』で文字化されているため,談話の流れや相互作用を考慮しながら,より多角的な分析・考察ができること ③BTSJという文字化の原則によって,研究者一人一人が,独自の観点からコーディング (分類等) ができること ④談話の流れが追えることから定性的分析ができる上に,コーディングを行うことによって,定量的分析も可能にし,両方の分析ができること ⑤『BTSJ文字化入力支援・自動集計・複数ファイル自動集計システムセット2019年改訂版』と連動していることから,コーディング項目の基本的な定量的分析が一瞬にしてできること ⑥話者の年代,性別などの社会的属性が対話相手との関係も含めて整理されている「会話データ情報一覧シート」がエクセルで提供されているため,それらの情報を活用することができればより掘り下げた分析ができることなどである。ここでは,主に,「フォルダの意味」と,「会話データ情報一覧シート」の活用法について解説する。

12:00~13:00昼食休憩

13:00~17:00第二部 『BTSJ日本語自然会話コーパス』を用いた研究と日本語教育

13:00~13:40 講演1「談話標識の出現傾向からみた会話の特性 ―『BTSJ日本語自然会話コーパス』から―」 甲田 直美 (東北大学 教授)

本講演では,『BTSJ日本語自然会話コーパス』における談話標識,語用論的標識の出現の頻度・傾向から,当該コーパスに格納されている会話の特性との相関を探る。言語のバリエーションと具体的言語指標との関係については,Douglas Biber (1988) などでも検討されているが,話し言葉の特徴はすべて包括的に「会話体」として一括されており,会話の持つ場面,使用者,話題などとの関連については,十分な検討が与えられていない。一方,BTSJコーパスには会話の諸特徴を捉える要素があらかじめ変数として使用可能な状態で格納されている。語用論的標識 (pragmatic markers) とは,Bruce Fraser (1996) が談話標識 (discourse marker) という範疇も含んだ,より包括的かつ一般化可能な概念・範疇として導入したものである。その機能には,対人関係的な機能,指示的な機能,構造的な機能,認知的な機能が含まれるが,このうち,本研究では,対人関係の調整に注目し,接続詞,緩和語,ヘッジ,強意語について,話者の性差,人間関係,話題,場面による会話の特徴とどのような関係があるか考察する。

13:40~14:20 講演2「「しかもさー,おれ今,金,徴収してんじゃん」 ―親しい友人同士の雑談での共通基盤構築に関して」 西郷 英樹 (関西外国語大学 准教授)

会話で話し手は聞き手との間に共通基盤を構築しながら話を展開させている。ここでいう共通基盤の構築とは,自分 (話し手) が次に話す内容の下準備的なものである。この下準備を行う能力は,特に雑談においては重要である。なぜならば,雑談で話し手は自分の経験談や考えなどに関して話を展開させていくことが多いからである。しかしながら,談話レベルでの指導が未だ進んでいない現在の日本語教育において,雑談などの会話における共通基盤の構築のしかたが体系的に教えられることはないと思われる。

現在,発表者は,BTSJコーパスに収録されている雑談データを用いて,聞き手との間に共通基盤を構築する際,日本語母語話者がどのような表現・ストラテジーを用いているかを分析している。本講演では,これまでの分析から明らかになったことをまとめ,そうした知見が日本語教育における談話レベルの指導にどのように貢献できるかを論じる。

14:20~14:30休憩 (10分)

14:30~15:00 「雑談に出現する「やはり」の使用実態 ―『BTSJ日本語自然会話コーパス』の調査から―」 鈴木 英子 (一橋大学大学院生),石黒 圭 (国立国語研究所 教授)

「やはり」は「やっぱり」の形で会話に頻出する副詞であり,学習者に比べて母語話者がとくに多用する形式として知られている。しかし,「やはり」がどのような環境で出現し,どのような用法が多いのかの定量的側面からの実態解明は十分には進んでいない。

そこで,本発表では,『BTSJ日本語自然会話コーパス』の86会話を対象に,「やはり」の使用率と出現環境の調査を行った結果を報告する。まず,接触場面・母語場面の相違や,話し手・聞き手の関係の親疎により「やはり」の使用率がどのように異なるのかを定量的に概観し,次に,発話中の出現位置別の「やはり」の出現傾向を提示する。とくに,発話中間部で,約3割の「やはり」が逆接の接続詞・接続助詞がある文脈で用いられていること,発話末尾部で「やはり」が言い切りの直後か,別の後続発話に吸収される環境で出現することの内実を考察することにより,自然会話の「やはり」の使用実態に迫りたい。

15:00~15:30 「上級日本語学習者の接続詞「でも」の使用実態と困難点」 井伊 菜穂子 (一橋大学大学院生),石黒 圭 (国立国語研究所 教授)

日本語学習者の会話における接続詞「でも」の使用実態については,これまで反論のマーカーとしての使用に着目した研究が多かった。しかし,「でも」は反論する場合だけでなく,話題を変えたり,相手を賞賛したり,相手に共感する場合など,幅広い文脈で使用されている。日本語学習者は,「でも」をどのような文脈でどのように使用しているのだろうか。また,誤用になりやすい場合があるとしたら,それはどのような場合だろうか。

本発表では,『BTSJ日本語自然会話コーパス』の中から,台湾人上級日本語学習者と日本語母語話者との雑談の接触場面を対象に,台湾人上級日本語学習者と日本語母語話者がそれぞれ接続詞「でも」をどのような文脈で,発話文のどのような位置で使用しているかを明らかにする。様々な文脈で使用できる「でも」の中で,日本語学習者が苦手な文脈を特定することができれば,教育現場でも使用が困難な文脈に絞って「でも」の対策をすることができると考える。

15:30~16:00 「雑談における「なんか」の使用実態 ―日本語母語話者と学習者による使用の違いを中心に―」 宇佐美 まゆみ (国立国語研究所 教授),張 未未 (早稲田大学大学院生)

日常の雑談の中で頻出するディスコース・マーカーとしての「なんか」は,一見無秩序に使用されているように見えるが,実際には多様な機能を持っており,談話進行の管理のみならず,人間関係の構築にも寄与する。「なんか」の使用方法が適切にできると,日本語学習者の日本語が,より自然で円滑に進むこともある。しかし,自然会話における「なんか」の使用実態は,十分に解明されているとは言いがたい。

そこで,本発表では,『BTSJ日本語自然会話コーパス (2020年版) 』を利用して,母語場面の雑談における母語話者による「なんか」の使用実態,接触場面の雑談における母語話者と非母語話者による「なんか」の使用実態を明らかにする。具体的には,発話文における出現位置ごとの「なんか」と,その「後続内容」を考慮した上で,主に,その「和らげ機能」を中心に,定量的・定性的双方から分析する。母語話者と非母語話者による「なんか」の使用がどのように異なるのか,また,母語話者は,相手が母語話者の場合と,非母語話者の場合で,「なんか」の使用に違いがあるのか等について分析する。それらの結果を踏まえて,日本語教育における「なんか」の扱い方を考える。

16:00~16:15休憩 (15分)

16:15~16:55 全体ディスカッション

司会 : 宇佐美 まゆみ (国立国語研究所 教授)
登壇者 : 鎌田 修,甲田 直美,西郷 英樹,石黒 圭,鈴木 英子,井伊 菜穂子,張 未未 (発表者全員)

16:55~17:00 閉会の辞

石黒 圭 (国立国語研究所 教授)

お申し込みについて

受付は締め切りました。お申し込みありがとうございました。

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締め切り : 11月18日 (水) 先着順
(一定数に達したら締め切る可能性もありますので,お早めにお申し込みください。)
お申し込みいただいた方には,11月19日 (木) に参加方法をメールでお送りします。
参加費 : 無料