第二回 「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」オンライン研究発表会 (後期) (2020年10月16日)

プロジェクト名・リーダー名
対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
班名・リーダー名
音声研究班 「語のプロソディーと文のプロソディー」
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
開催期日
2020年10月16日 (金) 15:00~16:00
開催場所
Web会議 (Zoom を使用)
参加費
無料
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プログラム

「韻律情報は2度解釈されない : 子どもが捉える韻律情報の曖昧性」 広瀬 友紀 (東京大学)

日本語において,ピッチアクセントは語彙情報として位置づけられるが,ピッチ変化という情報は,異なる言語レベルでの多様な役割を担う。例えばある語におけるピッチの上昇という韻律現象が,その語を含む形態統語的な範疇の情報を反映したふるまいなのか,特定の統語的句構造に由来するのか,あるいは情報構造上の機能を持つのか,音声入力をリアルタイムで処理する聞き手にとっては多義である状況があり得る。本研究では日本語において三つの有核語からなる左右枝分かれ構造の統語的曖昧性 ( [ [青い猫] の傘] (Left Branching) vs. [青い [猫の傘] ] (Right Branching) ) を題材とする,そこで第二句 (「猫の」) のピッチの上昇が統語情報の反映である解釈とコントラスト現象の一部であるという解釈の間でさらなる一時的曖昧性を持つ状況を設定し,韻律情報の実時間処理のあり方について視線計測実験 (Visual World Paradigm) を異なる年齢層のグループに対して行った。成人においては第二句のピッチ上昇を,即時的にはコントラスト情報として解釈した後で,改めてこれを右枝分かれ統語構造の写像であると再解釈することを示す結果が得られた (Hirose 2019)。3〜5歳児においては年齢毎に振るまいが異なり,5歳児ではピッチ情報をコントラストとして解釈し,4歳児では専ら右枝分かれ構造と解釈する傾向があること,また,いずれの場合も,ひとつの韻律現象に与えた解釈は再解釈されないことが示唆された (Hirose and Mazuka, under review)。

Hirose, Y. (2019) Sequential interpretation of pitch prominence as contrastive and syntactic information: contrast comes first, but syntax takes over. Language and Speech, 63 (3), 455-478.
https://doi.org/10.1177/0023830919854476

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