「通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開」研究発表会 (2019年9月9日)
- プロジェクト名・リーダー名
- 通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開
小木曽 智信 (国立国語研究所 言語変化研究領域 教授) - 開催期日
- 2019年9月9日 (月) 13:30~17:30
- 開催場所
- 東洋大学 白山キャンパス 10号館 A101教室 (東京都文京区白山 5-28-20)
アクセス
通時コーパス活用班合同研究発表会 (語彙・意味グループ, 中古・中世グループ,文体・資料性グループ)
プログラム
13:40~17:30 研究発表
- 13:40~14:30
「「さらば」の日本語史」
竹内 史郎 (成城大学),萩原 咲 (銚子商業高等学校)
文献に現れる「さらば」の用法とその派生について整理し記述する中で,ある種の推論を担う用法から別れ言葉としての用法が派生したことを明らかにする。接続詞から別れ言葉へと移行することになる仕組みについても言及する。
- 14:40~15:30
「中古中世の副詞「ただ」と副助詞・係助詞」
宮地 朝子 (名古屋大学)
副詞「ただ」は,古代語では副助詞「のみ」,現代語では「だけ・ばかり」との共起が特徴的とされ,事態の単質性・唯一性や限定といった副助詞の意味用法の指標ともされる。一方,古代語では「ただ有明の月ぞ残れる」のように係助詞との共起例も少なくない。本発表では,中古中世の「ただ」と副助詞・係助詞との共起例を観察し,その関係の内実を検討する。「ただ」の用法変化も考慮に入れつつ,副助詞・係助詞と副詞句との関係についても考えたい。
- 15:40~16:30
「接続表現「ソレ・ソコ+助詞」の歴史的変化」
岡崎 友子 (東洋大学)
これまでの古代語の接続表現研究は,主に指示副詞を構成要素とするものが対象であり,指示代名詞によるものは未だ明らかになっていないことが多い。岡崎 (2018) では中古 (CHJ) の「ソレ・ソコ+助詞」を調査・分析し,「ソレ+ヲ・二・モ」が接続表現として機能していることを明らかとした。そこで,本発表では岡崎 (2018) に引き続き,中世から近世までの「ソレ・ソコ+助詞」について調査・分析した結果を述べていく。
参考文献 : 岡崎 友子 (2018) 「「指示詞+助詞」による文連接の一考察 ―現代語・中古語コーパスの対照から―」 『日本語文法史研究4』 青木博史・小柳智一・吉田永弘編,ひつじ書房 - 16:40~17:30
「『今昔物語集』における仮名書自立語と欠字該当語との関係について ―「すがる」の存否をめぐる―」
山本 真吾
CHJ を用いると動詞「すがる」が『今昔』に2例ヒットするが,いずれも確例とは見なしがたい。『今昔』の欠字や仮名書自立語の問題は長らく追究されてきたが,本発表は,その知見を踏まえ「すがる」という語が『今昔』に存在した蓋然性を測定してみたい。