「通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開」研究発表会 (平成30年12月23日)
- プロジェクト名・リーダー名
- 通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開
小木曽 智信 (国立国語研究所 言語変化研究領域 教授) - 開催期日
- 平成30年12月23日 (日) 13:30~17:00
- 開催場所
- 明治大学 中野キャンパス 高層棟 2階 208教室 (東京都中野区中野4-21-1)
アクセス入構に際しては,通用口で守衛に身分証明書をご提示ください。
- 参加費・事前申込み
- 不要
近世・近代グループ 研究発表会
プログラム
13:30~17:00 研究発表
- 「近代における和語の用字法の変化 ―表記が増加する語を中心に―」
高橋 雄太 (明治大学大学院生 / 日本学術振興会特別研究員DC)
表記のゆれが統一に向かうことが報告される近代において,反対に表記が増加する現象を取り上げ,近代雑誌コーパスを用いてその実態と変化の要因を調査した。その結果,①近代において表記が増加する語は5%程度と少ないこと,②新たな表記が主要になる場合もあるがその多くは勢力が伸びないこと,③基本的には語の内部の意味の勢力図が変容したことによって用字法が変化したが,個別的で特殊な要因で変化する場合もあることがわかった。
- 「近世に見られる「あて字」の近代への伝播について」
銭谷 真人 (日本学術振興会特別研究員PD)
近世の人情本には,「息災 (たっしゃ) 」「変詐 (たばかる) 」「弱官 (わかうど) 」など,種々の「あて字」が見受けられる。現在では用いられることのないこれらの「あて字」は,作者の独創であり,臨時的なものであったのか。中には「霎時 (しばし) 」のように,白話語彙に由来し,人情本に先行する読本にも見られ,近代の小説においてもその使用が確認されるものもあった。本発表ではそのような「あて字」について,特に近代への伝播という観点から『日本語歴史コーパス』を用いて検証を試みたい。
- 「外来語と翻訳語 ―明治時代の西洋語受容―」
田中 牧郎 (明治大学)
抽象概念を表す語を西洋語から日本語に受け入れる際,「リバティー」「モラル」のように,音訳による「外来語」として受け入れる場合と,「自由」「道徳」のように,意訳による「翻訳語」として受け入れる場合とがある。明治時代においては,受け入れ初期段階では外来語が用いられることが多いが,受け入れが進むと翻訳語が用いられることが多くなる。その外来語から翻訳語へという移行が,明治時代を通じて存在することと,移行のありように時代差が認められることを,明治時代のコーパスデータを用いて考察する。