「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」研究発表会 (平成30年11月18日)

プロジェクト名・リーダー名
対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
班名・リーダー名
音声研究班 「語のプロソディーと文のプロソディー」
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
開催期日
平成30年11月18日 (日) 10:00~12:00
開催場所
京都大学 吉田キャンパス (京都市左京区吉田本町)
アクセス

事前申込み不要,参加には日本言語学会参加費 (一般会員 2,000円,学生会員 1,000円,一般非会員 3,000円,学生非会員 2,000円) が必要です。

音声研究班 「語のプロソディーと文のプロソディー」 平成30年度 第3回研究発表会

10:00~12:00
日本言語学会ワークショップ 「日本語の呼びかけイントネーション」
"Vocative intonation in Japanese"

企画者・司会者 : 窪薗 晴夫
Organizer / Chair: KUBOZONO Haruo

「東京方言の呼びかけイントネーション」
"Vocative intonation in Tokyo Japanese"
溝口 愛 (国立国語研究所 / ニューヨーク市立大学)
MIZOGUCHI Ai (NINJAL / City University of New York)

東京方言の呼びかけイントネーション

「鹿児島方言と甑島方言の呼びかけイントネーション」
"Vocative intonation in Kagoshima and Koshikijima Japanese"
窪薗 晴夫 (国立国語研究所)
KUBOZONO Haruo (NINJAL)

鹿児島方言と甑島方言はともに2つのアクセント型 (A型,B型) を持つ二型アクセント体系でありながら,前者は音節単位,後者はモーラ単位の体系を持つ。また後者はアクセントの山が二つ現れる (重起伏) という点で前者と異なる。呼びかけイントネーションについては「ピッチの下降」という点で両者は共通していた特徴を示す一方,その現れ方には顕著な違いが見られる。甑島方言ではすべての語がA型で発音されるようになり (...LHL),アクセントの中和が起こる。鹿児島方言では,A型語でもB型語でも,語末の2音節間でピッチ下降が起こるイントネーション型 (Ⅰ型) と,最終音節内でピッチ下降が起こる型 (Ⅱ型) の両方が観察される。A型語とB型語は同じ場面で同じイントネーション型を示すことがあることからアクセントの中和が起こると言えるが,Ⅰ型とⅡ型の2つのイントネーション型を示す点が甑島方言とは顕著に異なる。

「小林方言の呼びかけイントネーション」
"Vocative intonation in Kobayashi Japanese"
平田 秀 (国立国語研究所)
HIRATA Shu (NINJAL)

宮崎県小林方言は一型アクセントの方言であり,すべての語において最終音節が高いピッチを担う。アクセント型の対立をもたないため,型の区別がなくなる中和現象は生じない。老年層の呼びかけイントネーションは,最終音節が下降音調を担う形で実現され,この音節が重音節であっても軽音節であっても,音節内でピッチが下降する。また,老年層では疑問文に終助詞「-カ/-ケ」が義務的に付与されるため,呼びかけ文と疑問文は形態的に区別される。その一方で,この方言では話者間の差異が大きく,(a) 最終音節が軽音節・重音節の両者で下降の有無の揺れを示す話者,(b) 最終音節が重音節の場合のみ下降の有無に揺れを示す話者,(c) 最終音節が軽音節・重音節のいずれでも下降が起こらない話者の3タイプが観察される。全体的な傾向として,年齢が若くなるにつれて下降が起こらないパターンが多く見られる。