「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」研究発表会 (平成30年11月10日)

プロジェクト名・リーダー名
対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
班名・リーダー名
文法研究班 「名詞修飾表現」
プラシャント・パルデシ (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
開催期日
平成30年11月10日 (土) 13:00~18:00
開催場所
神戸大学 六甲台第2キャンパス (神戸市灘区六甲台町1-1)
アクセス
プロジェクトWEBサイト
http://crosslinguistic-studies.ninjal.ac.jp/noun/?page_id=274
参加申し込み
どなたでも参加可能ですが,参加人数を確認するため,事前に n.nomura[at]ninjal.ac.jp 宛にお申し込みください。

[at]を@に変えてください。

平成30年度 第2回 共同研究発表会

プログラム

「メチェ語の名詞修飾表現 ―形式と意味と名詞化との関係」 桐生 和幸 (美作大学)

本発表では,ネパール南東部で話されるメチェ語の名詞修飾表現のパターンをその形式と意味についての概要を報告する。名詞修飾は修飾要素の品詞によって形式やパターンが異なる。形容詞や動詞が名詞を修飾する場合,異なるパターンの名詞化が関係しており,その統語構造も異なる。いわゆる関係節では相関関係詞を用いたものもある。

「ジンポー語における名詞化と名詞修飾節」 倉部 慶太 (東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所)

ジンポー語はシナ・チベット語族チベット・ビルマ語派に属する言語である。本発表では,どの名詞修飾要素がどの名詞下位類を修飾するか概観した後,特に名詞化と名詞修飾節に焦点を当てて考察する。ほかの多くのチベット・ビルマ系言語同様,ジンポー語の名詞修飾節の形成には名詞化が関与する。この言語は,関係節と名詞補文節に形式上の区別がなく,名詞修飾節の成立条件が意味・語用論的に規定されるなど,いわゆるアジア型の特徴を示す。

「ダパ語の名詞修飾表現」 白井 聡子 (日本学術振興会 / 筑波大学)

ダパ語 (チベット=ビルマ語派;中国四川省) の名詞修飾表現と名詞化について検討する。ダパ語において,形容詞が名詞を修飾する際は,重複による名詞化形式が用いられる。また,名詞修飾節は,形式上は名詞化節であり,主要部名詞に先行する。外の関係の名詞修飾節も,一部,可能である。ただし,ダパ語においては,いわゆる “headless relative clause” や “internally-headed relative clause” を含めた,名詞化 (Shibatani forthcoming) が,厳密な意味での名詞修飾節に比べて優勢である。以上の観察を踏まえて,ダパ語の名詞修飾表現における名詞化の機能を分析する。

「カトマンズ・ネワール語の名詞修飾」 松瀬 育子 (ネワール言語文化研究所)

カトマンズ・ネワール語の名詞修飾については先行研究も多く,Keenan and Comrie1977 等で提示された Noun Phrase Accessibility Hierarchy についての調査も実施されている (O’Rourke2000)。ところが,O’Rourke2000 では,カトマンズ・ネワール語の3種の名詞化辞 (*=mha, =pĩː*, *=gu*) の機能についてほとんど触れられていない。本発表では,カトマンズ・ネワール語の名詞修飾で重要な役目を果たす名詞化辞の振る舞いに注目し,チベット・ビルマ語派の諸言語で50年近く前から議論されている nominalization と relativization の関係を問い直し,Shibatani2018 で示された Nominal-based nominaliz- ation の理論との関係を考察する。