「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」研究発表会 (平成30年9月17日)

プロジェクト名・リーダー名
対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
班名・リーダー名
音声研究班 「語のプロソディーと文のプロソディー」
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
開催期日
平成30年9月17日 (月・祝)
開催場所
琉球大学 地域創生総合研究棟 1階 多目的ホール (〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町字千原1番地)
アクセス

事前申込み不要,参加無料

プログラム

テーマ : 琉球語のアクセント

9:30~10:50 発表① 「3拍名詞第4類における本土日本語と琉球語間の1対2のアクセント型の対応について」
"On the one-to-two accentual correspondence in Class 3.4 between Japanese and Ryukyuan"
五十嵐 陽介 (一橋大学)
IGARASHI Yosuke (Hitotsubashi University)

3拍名詞第4類における1対2の音対応は,琉球語アクセントの通時的研究における未解決問題の1つである。第4類とは「鏡,暦,刀,蓆」等からなる約70の語であり,本土日本語では一貫して単一のアクセント型で実現される。ところが琉球語諸方言では,第4類の一部 (鏡,暦…) がある型で,残り (刀,蓆…) が別の型で実現される。前者を「鏡類」,後者を「刀類」と呼ぶ。この1対2の対応を発見した先行研究には,しかしながら,分析した語数が第4類の総語数の3割にも満たず,データも北琉球に偏っているという問題がある。本発表はより多くの語を対象として,北琉球・南琉球の諸方言のアクセント型の対応を検討した。その結果,第4類の85%以上が「鏡類」であり,「刀類」は数の上では例外であることが明らかになった。本発表はさらに「刀類」は大分方言でも例外的な型で実現される事実を示し,問題の対応が琉球語に固有ではない可能性を指摘する。

11:10~12:30 発表② 「沖縄本島北部の三型アクセント体系の諸相 ―通時的な視点から―」
"Aspects of the three-pattern accentual systems in the northern part of the Main Island of Okinawa: from the diachronic point of view"
松森 晶子 (日本女子大学)
MATSUMORI Akiko (Japan Women’s University)

国頭 (くにがみ) 村4地点,名護市4地点,東 (ひがし) 村1地点,今帰仁 (なきじん) 村2地点,伊是名 (いぜな) 島,伊平屋 (いへや) 島など,沖縄本島の北部の三型体系内部のアクセント型の特質を概観しながら,これらの体系に共通する特徴について論じ,あわせて沖縄本島のアクセント研究の今後の記述的課題も提案する。今,琉球祖語の3つの系列A,B,Cに相当する型をそれぞれA型,B型,C型と呼ぶとすれば,本発表では,本島北部の三型体系は,(1) A型は文節が高く始まり,B型,C型は低く始まる,(2) A型は文節の前から,B型とC型は後ろから数えることによってそのアクセント位置が決まる,という2つの特徴を共有している可能性があると指摘する。松森 (2017) は北琉球祖語のアクセント体系について,A系列にHLH,B系列にLLH,C系列にLHLという祖型を提案したが,その仮説が以上の事実をどのように説明できるかについても論じる。

13:30~14:50 発表③ 「南琉球多良間方言のアクセント低核」
"On the Low-Kernel of the Accent in the Tarama Dialect of Southern Ryukyuan"
新田 哲夫 (金沢大学)
NITTA Tetsuo (Kanazawa University)

多良間方言のアクセントは三型アクセント体系をもっており,そのことは研究者の間では周知の事実となっている。多良間方言のアクセントの弁別特徴は,HLの「下降」であると見なされてきたが,LHの「上昇」もまたアクセントの実現という認識が出てきた。発表者はこの方言の弁別特徴は有核の韻律語の末位モーラが常に低くなる「アクセント低核」 (…L*) であることを提案する。アクセント低核は,核のあるモーラが「常にLになる」という特徴を有するが,核の前がHの場合は,核の置かれるLへの下降を伴い (…H↓L*) ,核の前がLの場合は,核のあるモーラがLで実現した直後,核の特徴を際立たせるために上昇を伴う (…LL*↑) 。この二種の韻律語は環境的変異と見なすことができる。本発表ではさらに,アクセント型が指定される韻律語の他に,アクセント型の指定のない「副韻律語」を仮定して分析を試みる。