「通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開」研究発表会 (平成30年8月21日)

プロジェクト名・リーダー名
通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開
小木曽 智信 (国立国語研究所 言語変化研究領域 教授)
開催期日
平成30年8月21日 (火) 13:30~18:00
開催場所
国立国語研究所 多目的室 (東京都立川市緑町10-2)
交通案内

事前申込み不要,参加無料

通時コーパス活用班 合同研究発表会 (中古・中世グループ, 近世・近代グループ)

プログラム

13:30~18:00 研究発表

  • 「時を表す語彙におけるチカゴロの位置」
    山際 彰 (関西大学大学院)

    時を表す語として中世前期頃から使用されるチカゴロは,中世後期から近世にかけて程度の強調を表す意味を生じさせることが先行研究で注目されてきた。それに対して,その原義である時を表す語としての側面 (―とりわけ類義語との関係性) はあまり注目されていない。
    そこで,本発表では,先行研究で述べ残されている点に言及しつつ,類義語との関連を踏まえて時を表すチカゴロの使用状況について述べる。

  • 「コーパスから見る『東洋学芸雑誌』の特徴」
    南雲 千賀子 (国立国語研究所)

    現在構築中の『東洋学芸雑誌コーパス』 (2019年3月末リリース予定) が,同時代の他のコーパス (『明六雑誌』,『国民之友』,『太陽』,『女学雑誌』,『女学世界』,『婦人倶楽部』) と比較して,どのような日本語的特徴を持つのかを調査する。また,その特徴を踏まえ,『東洋学芸雑誌コーパス』の日本語研究への活用法を検討したい。

  • 「中古・中世における住居語ヤドとイエとの位相差」
    松崎 安子 (国立国語研究所)

    住居語彙のうちヤドとイエとは,万葉集において同程度の使用が見られるが,中古では和歌にヤド,散文にイヘがもちいられた傾向があり,その位相差が先行研究で指摘されている。
    それを受けて本発表では,主に『日本語歴史コーパス』を利用し,先行研究を追試することに加え,対象とする時代を中世に下らせ,両語の位相差の維持あるいは変化について報告する。

  • 「中古における副詞「いと」の多用をめぐって」
    高山 善行 (福井大学)

    中古語「いと」は和文文学作品で多用され,たとえば,『源氏物語』での用例数は4,000を超える。なぜ,ここまで多用されたのであろうか。実際にテキストを観察してみると,狭い文章の範囲内で,過剰と思えるほど連続的に使用される場合がある。この事実は,「いと」が高い程度を表す程度副詞であるという常識的な理解を疑わせるものである。
    本発表では,「いと」の意味分析をおこなう上で,観察者の心的態度の側面に目を向けてみたい。「いと」は,現実の事態に対する観察者の実感を表し,その意味特性が多用化につながったと考えられる。