平成29年度 コーパス合同シンポジウム 「コーパスに見る日本語のバリエーション ―話者の属性―」
- 主催
- 国立国語研究所 : 言語変異研究領域
言語変化研究領域
音声言語研究領域
日本語教育研究領域 - プロジェクト名,リーダー名
- 日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成木部 暢子 (国立国語研究所 言語変異研究領域 教授)
- 通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開小木曽 智信 (国立国語研究所 言語変化研究領域 准教授)
- 大規模日常会話コーパスに基づく話し言葉の多角的研究小磯 花絵 (国立国語研究所 音声言語研究領域 准教授)
- 日本語学習者のコミュニケーションの多角的解明
(学習者コーパスに基づく第二言語としての日本語の習得研究)迫田 久美子 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 客員教授) - 共催
- 科研費 基盤研究 (A) :日本語諸方言コーパスの構築とコーパスを使った方言研究の開拓
日本語歴史コーパスの多層的拡張による精密化とその活用
海外連携による日本語学習者コーパスの構築および言語習得と教育への応用研究 - 科研費 基盤研究 (B) : コーパス言語学的手法に基づく会話音声の韻律特徴の体系化
- 開催期日
- 平成29年9月8日 (金) 10:00~16:30
- 開催場所
- 国立国語研究所 講堂 (東京都立川市緑町10-2)
- ポスター [ PDF | 1,791KB ]
概要
言葉は,話し手・聞き手・場面・話題など,さまざまな要因によってさまざまな形で現れます。では,どのような要因がどのように働いて,どのような言語表現が作り出されるのでしょうか。このシンポジウムでは,話者の年齢,性別,社会的属性,言語学習歴,言語環境といった「話者の属性」が言語表現とどのように関係しているのかについて,コーパスから分かることを探り,発表しました。
プログラム
司会 : 迫田 久美子,木部 暢子
10:00~10:10開会の挨拶
10:10~11:10招待講演「待遇コミュニケーションにおける「人間関係」と「表現形式」との連動」蒲谷 宏 (早稲田大学大学院 日本語教育研究科 教授)
「待遇コミュニケーション」というのは,「待遇表現」と「待遇理解」の総称であり,コミュニケーションを「待遇」の観点から捉えたものである。つまり,コミュニケーション主体の「場面」 (「人間関係」と「場」) の認識を重視してコミュニケーションを捉えようとする理論的枠組みである。待遇コミュニケーションの基礎となる,「言語」とは (音声・文字を媒材とした) 表現行為・理解行為として成立するものだとする「〈言語=行為〉観」に基づき,「話者の属性」と「言語表現」との関係について講演した。
11:20~12:00研究発表1「学習者コーパスに見る言語環境の違いとコミュニケーション」迫田 久美子 (国立国語研究所 客員教授),細井 陽子 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 プロジェクト非常勤研究員)
日本国内の教育機関で日本語指導を受けている学習者とほとんど指導をうけないで家庭や職場のインプットから日本語を学んでいる学習者を対象として,「依頼のロールプレイ」に見られる中途終了文 (言いさし) の使用に違いが見られるかどうかを検討し,環境の違いと指導の影響について検討した。
12:00~13:00お昼休憩
13:00~13:40研究発表2「諸方言コーパスに見る男性の言葉・女性の言葉」木部 暢子 (国立国語研究所 言語変異研究領域 教授)
東京方言などでは,人称代名詞や文末詞に男女差が現れると言われる。一方,諸方言を見ると,使用語形に関しては,人称代名詞や文末詞に男女差がない場合がよくある。では,方言における言葉の男女差は,どのような形で表されるのだろうか。現在,構築中の『日本語諸方言コーパス』を使って,いくつかの方言の事例を報告した。
13:40~14:20研究発表3「話し言葉コーパスに見る言葉の年齢差」小磯 花絵 (国立国語研究所 音声言語研究領域 准教授)
話し言葉のコーパスとして講演・スピーチを中心とする『日本語話し言葉コーパス』を用い,話し言葉に特徴的なフィラー表現やイントネーションに見られる男女差を定量的に分析した。また,現在構築中の『日本語日常会話コーパス』を対象に,性別だけでなく相手との関係性なども視野に入れ,言語使用の違いを具体的に考察した。
14:20~14:50休憩
14:50~15:30研究発表4「歴史コーパスにおける話者属性アノテーションとその可能性」小木曽 智信 (国立国語研究所 言語変化研究領域 教授)
歴史コーパスでは,話し言葉を対象とするコーパスとは異なり発話や話者の存在が必ずしも前提とならない。書き言葉中の発話部分を取り出し話者の属性を付与するには,ことさらにアノテーションの方針を検討する必要がある。本発表では,これまでに『日本語歴史コーパス』で付与してきた話者属性アノテーションの例として中古仮名文学作品と狂言・洒落本を取り上げ,これによってどのような研究が可能になるのかを今後の課題とともに示した。