「日本語から生成文法理論へ : 統語理論と言語獲得」研究発表会
- プロジェクト名・リーダー名
- 日本語から生成文法理論へ : 統語理論と言語獲得
村杉 恵子 (南山大学 外国語学部 教授) - 開催期日
- 平成28年12月26日 (月) 13:00~18:00
平成28年12月27日 (火) 10:00~17:00 - 開催場所
- 国立国語研究所 2F 多目的室 (東京都立川市緑町10-2)
交通案内
第1回ワークショップ
平成28年12月26日 (月)
13:00~14:40
- 趣旨説明
- “On the Locality of Anaphor Binding and A-movement”
「照応形束縛とA移動の局所性について」
斎藤 衛 (南山大学 教授)
日本語分析に基づいて,フェイズ理論とラベリング・アルゴリズムの定式化に修正を加え,制御の移動分析や非適正移動の分析などに関する帰結を探る。
- “Some Thoughts on Ga/No Conversion and Phase Theory”
「ガ / ノ交替とフェイズ理論に関する考察」
越智 正男 (大阪大学 准教授)
日本語のガ / ノ交替現象に関しては先行研究において興味深い性質が数多く指摘されてきた。本発表ではガ格とノ格の交替の随意性の問題,ノ格項の非焦点化の問題,ガ格項とノ格項のスコープの違いの問題に対して,主要な仮説 (D認可仮説とC認可仮説) からの知見を援用しつつフェイズ理論における分析を試みる。
14:50~16:20
- “Distinguishing between Count and Mass in Japanese and General Number”
「日本語における可算・不可算の別と一般数」
藤井 友比呂 (横浜国立大学 准教授)
日本語や中国語は,英語等と異なり,名詞句が“一般数”をもつことを許すと言われる。また可算・不可算の別に関しても英語等と異なっていると言われる。本発表では削除現象,融通性 (elasticity) 等の現象を足がかりに一般数と可算・不可算の別の関係を議論する。
- “On Quotes in Japanese”
「日本語の引用について」
宮本 陽一 (大阪大学 准教授)
日本語の引用について,生成される位置,要素の抜出の可否等,統語的な特性を明らかにすることを目的とする。
16:30~18:00
- “Labeling and Ellipsis”
「ラベル付けと省略」
高橋 大厚 (東北大学 教授)
本発表は,省略項からの抜き出しに関する日本語と中国語の差異を考察する。ラベル付け理論によりその差異を説明することを試みる。
- “Root Infinitives from a Minimalist Perspective”
「ミニマリスト理論からみる主節不定詞現象」
村杉 恵子 (南山大学 教授)
本発表では,世界の言語の多くの言語獲得の中間段階に見られる主節不定詞現象について,日本語,韓国語,トルコ語,ルーマニア語などの特徴を概観し,併合とラべリングの獲得過程について考察する。
平成28年12月27日 (火)
10:00~11:30
- “On Verb Movement in Japanese”
「日本語の動詞移動に関して」
船越 健志 (国立国語研究所 特任助教)
動詞残余型動詞句削除 (Verb-stranding VP ellipsis) の前提条件である動詞移動が日本語に存在することを,動詞句前置に関する新しい一般化に基づいて議論する。
- “Optional ‘Overt’ Movement, Forced ‘Covert’ Movement”
「随意的『顕在』移動と義務的『非顕在』移動」
奥 聡 (北海道大学 教授)
従来,操作の適用そのものの随意性と捉えられてきた随意的移動に関して,本研究では内的併合 (「移動」) 後に上位コピー,元位置コピーのどちらを外在化するかが随意的であるという可能性について考察する。
11:40~12:25
- “Scope (Anti-)Reconstruction in Child Japanese”
「幼児日本語における作用域の (抗) 再構築」
杉崎 鉱司 (三重大学 教授)
本発表では,日本語の「ケンがリンゴだけ食べなかった」のような文において否定が「だけ」よりも広い作用域を持つことができないという現象に関し,Shibata (2015) の分析から幼児日本語への予測を導き出し,その妥当性について調査した実験の結果について報告する。
13:40~15:10
- “Issues Surrounding the Properties of Japanese Predicates”
「日本語の述語形成をめぐる諸問題」
岸本 秀樹 (神戸大学 教授)
本発表では,複数の述語要素が組み合わさる日本語の複雑述語形成の経験的および理論的な問題点を考える。本発表では,特に,いわゆる「VN-する」の軽動詞構文と ECM構文に焦点を置いて,いくつかの経験的な事実を見た上で,これからの研究の方向性について検討する。
- “Labeling and the Variability of Spell-Out Domains”
「ラベル付けと書き出し領域の可変性」
瀧田 健介 (明海大学 准教授)
本発表では,統語的構築物のラベル付けは統語構造の線状化のためにのみ必要であるという仮説のもとで,排出の対象となる領域の可変性の問題を取り扱う。より具体的には,日本語の助詞残留省略に関して新しい分析を提案する。
15:25~17:00
- “On Extending Exocentric Labeling”
「外心的ラベルづけの拡大について」
多田 浩章 (福岡大学 准教授)
多重焦点構文 (日本語) と Q-Wh吸収構文 (英語,日本語) を統一的にとらえるために,Chomsky (2015) の <φ, φ> とは異なる外心的ラベルづけを提案し,その帰結を考察する。
- 意見交換とまとめ