「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」研究発表会
- プロジェクト名・リーダー名
- 対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授) - 班名・リーダー名
- 文法研究班 「名詞修飾表現」
プラシャント・パルデシ (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授) - 開催期日
- 平成28年11月19日 (土) 9:30~18:00
- 開催場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 全学教育棟本館 北棟4階 406室 (名古屋市千種区不老町)
どなたでも参加可能ですが,参加人数を確認するため,事前に kasai.yoko[at]ninjal.ac.jp 宛にお申し込みください。
文法研究班 「名詞修飾表現」 平成28年度 第2回研究発表会
9:30~10:00 受付
10:00~10:20 「言語地図作成用アンケート調査について」 プラシャント・パルデシ (国立国語研究所)
- 発表資料 [ PDF | 623KB ]
10:20~11:20 「日本語の相対名詞連体修飾の統語的特性について」 大島 資生 (首都大学東京)
- 発表資料 [ PDF | 1,082KB ]
日本語学において,日本語の連体修飾節は大きく二つに分類することが広く行われている。一つは被修飾名詞を修飾節内部に復元することができる「内の関係」 (「太郎が読んだ本」→「太郎が本を読んだ」),もう一つは復元することができない「外の関係」である。「外の関係」はさらにいくつかのタイプに下位分類できる。主なものの一つは「太郎が本を読んだ事実」のように修飾節が非修飾名詞の内容を示すもの (寺村 (1977) などでは「内容補充の関係」と呼ばれている) であり,もう一つは「パレードが進んでいくあとを子どもたちがついていった」のように,相対的な時間・空間的関係を示す「相対名詞」 (奥津 (1974) ) が非修飾名詞となっているものである。本発表では後者の「相対名詞」を修飾するものを取り上げる。そして,このタイプの修飾節の統語的特性,特にテンス・アスペクトに注目して,「内容補充の関係」,さらには「内の関係」との差異を観察・検討する。
11:20~12:20 「日本語関係節構造の類型性と語用論的制約」 加藤 重広 (北海道大学)
- 発表資料 [ PDF | 490KB ]
日本語の連体修飾節 (関係節) 構造がその言語類型論的特性によって得たと考えられる特徴について考察する。特に,修飾部が節としての性質を持ちうるかどうかには修飾部のテンスの有無が連動していること,また,いわゆる「外の関係」が可能であるのは,形態的標示を持たない gap 型関係節を用いる日本語が統語構造的制約ではなく語用論的制約を利用するしくみを強めたこと,以上2点について論じる。
13:20~14:20 「古典日本語の名詞修飾節再訪 ―連体節・準体節・主名詞内在関係節・形状性名詞句―」 金水 敏 (大阪大学)
- 発表資料 [ PDF | 267KB ]
平安時代の日本語には,「【白き】鳥の〈嘴 (はし) と脚 (あし) と赤き〉,〈鴫の大きさなる〉,水の上に遊びつつ,魚 (いを) を食ふ」 (伊勢物語・九段) のように,主名詞に前から係っていく前置 (連体) 修飾節 (【 】で囲った部分) と,主名詞を後から限定する後置修飾節 (〈 〉で囲った部分) がある。これらを含めて,連体形節の用法のうち名詞句を形成する用法を構造,機能,分布の面から再整理し,対照研究の足がかりとする。
14:20~15:20 「日本語方言の名詞修飾構造とその周辺」 佐々木 冠 (札幌学院大学)
- 発表資料 [ PDF | 2,645KB ]
本発表では日本語方言の名詞修飾構造の多様性を概観するとともに文の名詞性と関わる問題を検証する。前半では連体修飾格助詞と準体助詞の多様性および終止・連体合流の多様性を取り上げる。後半では,茨城県神栖市波崎の方言データをもとに拡張コピュラ構文 (いわゆるノダ文) で準体助詞が用いられない方言に関して提案されている動名詞分析を検証する。
15:50~16:50 「『内の関係』と『外の関係』の名詞修飾節の通言語的バリエーション: クメール語・日本語・英語を中心に」 堀江 薫 (名古屋大学),ハイタリー (名古屋大学院生)
- 発表資料 [ PDF | 2,676KB ]
本発表では,「内の関係」の名詞修飾節と「外の関係」の名詞修飾節が構造的にどのように区別されるか,あるいは連続的であるかによって,(I) 「内の関係」 (「関係節」) と「外の関係」 (「補文」) を統語的に厳密に区別する言語 (例 : 英語),(II) 「内の関係」「外の関係」のいずれも「名詞修飾節」という構造の中に包摂される言語 (例 : 日本語),(III) いずれとも異なる「内の関係」と「外の関係」の名詞修飾節の構造的分布を示す言語 (例 : クメール語) という3類型を提案した Comrie and Horie (1995) の研究を,新たに収集したクメール語のデータに基づいて再検討することを目的とし,現時点での暫定的な観察を提示する。
16:50~18:00 招待講演「日本語から見た名詞修飾構文 ―これまでの研究とこれからの課題―」 益岡 隆志 (関西外国語大学)
- 発表資料 [ PDF | 331KB ]
本発表では,名詞修飾構文の対照研究に対する日本語研究の貢献の可能性を探る。前半では,これまでの研究を代表する寺村の研究を概観しつつ日本語名詞修飾構文の特徴を整理する。それを受けて後半では,これからの課題として「構文環境」の観点から,名詞修飾構文が文内部の環境及び文外部の談話・テクスト環境のなかでどのような機能を果たすのかという問題を取り上げる。