「接触方言学による「言語変容類型論」の構築」研究発表会
- プロジェクト名
- 接触方言学による「言語変容類型論」の構築 (略称 : 接触方言)
- リーダー名
- 朝日 祥之 (国立国語研究所 時空間変異研究系 准教授
- 開催期日,開催場所
- 平成23年12月9日 (金) 14:00~18:00 国立国語研究所 3階 セミナー室
平成23年12月10日 (土) 10:00~13:00 国立国語研究所 1階 大会議室
発表概要
平成23年12月9日
Theory, method and practice: exploring the relationship between spoken language in the media and speech change in societyJane Stuart-Smith (University of Glasgow, Reader)
This talk will have two parts. In the first part I will outline relevant theory and methods for studying the influence of the media on language change, by reviewing fundamental assumptions (a) within sociolinguistics and (b) within mass communication studies, and (c) draw connections between the two disciplines. I will then outline a specific problem of language change where the media have been identified as a possible influence, and describe a large-scale project to investigate this possibility. In the second part I will how theory and method outlined in part 1 are put into practice in the project. I will report on five aspects: media models and community norms; imitating media models; correlating media with language use; the role of individuals and media influence; and when and how speakers may appropriate aspects of media language into their own interaction.
ハワイ移民1世に見る東西方言の接触 ―文字化資料の整備と新たな発見―白岩 広行 (大阪大学 助教),平本 美恵 (シンガポール大学 助教)
明治以降から昭和初期にいたるまで,日本からハワイへ多くの移民が渡ったことは知られているが,その大半は中国・九州地方を中心とした西日本出身者が占めている。一方,比較的少数ではあるが,東日本では福島県・新潟県がまとまった数の移民を送り出している。本研究は,この福島県・新潟県出身の1世移民の語りを録音した資料をもとに,多数を占める西日本出身者のなかで彼らがどのような方言接触を経験したか分析する。
このデータについては,すでに平本が文字化をほどこし,全体的な文法・音声現象の記述をおこなっているが,今回は,福島方言の母方言話者として白岩がプロジェクトに加わることで,新たな知見を提供したいと考える。特に,録音データの文字化にあたって,母方言話者でなければ聞き逃す事項等を整理し,すべての分析の基盤となる文字化資料作成の整備方針を確認する。また,文字化資料整備のなかで見えてきた新たな発見を取り上げ,今後の分析を深める手がかりとして提示する。
平成23年12月10日
日本語方言の韻律的変異と言語変化について太田 一郎 (鹿児島大学 教授)
本発表では,北海道,福岡,鹿児島における音調句形成に見られる変異を取り上げ,音調レベルでの言語変化の可能性を探る。取り上げる変異は,複数の音韻語が新たな音調単位を形成するさいの「韻律的従属 (prosodic subordination) 」の様相ある。ディフレージングやダウンステップなど,複数の音韻語が融合してより大きな音調句が形成される際に見られる結合の度合いを表すF0の値を従属変数,言語的,社会的要因を独立変数とした言語変異の模式化を行い,これらの要因の関連を求めることで,各地方言の音調句形成にどのような類似点,相違点があるかを検討し,音調レベルでの言語変化の可能性を考える。
北海道札幌市/釧路市における共通語化に関する実時間調査朝日 祥之 (国立国語研究所 准教授),尾崎 喜光 (ノートルダム清心女子大学 教授)
本発表では,これまで国立国語研究所,ならびに北海道方言研究会によってそれぞれ札幌市,釧路市で実施された言語調査の実時間調査の企画,設計について報告する。具体的には今年度,両地域で調査が実施されているが,実施に向け検討した内容を話題とする。