「首都圏の言語の実態と動向に関する研究」研究発表会

プロジェクト名
首都圏の言語の実態と動向に関する研究
リーダー名
三井 はるみ (国立国語研究所 理論・構造研究系)
開催期日
平成23年2月25日 (金) 15:00~16:30
開催場所
国立国語研究所 3階 セミナー室

発表概要

アキバの言語景観田中 ゆかり

2010年5月から6月に行なった秋葉原駅界隈の言語景観調査の一部について報告する。
東京都千代田区に位置する秋葉原駅周辺,通称アキバは,電気街としてよく知られる地域である。近年では,サブカルチャーの街としても知られ,外国人観光客からの人気も高いエリアである。このような背景をもつ街であるため,外国人観光客目当ての多言語化が他地域に比べ進んでいると推測されると同時に,電気街とサブカルの街という2つの層が言語景観に何らかの形で反映されている可能性もある地域である。首都圏をはじめ全国で進行中の公的ガイドラインに基づく多言語表示の標準パターン化との対比も視野に入れ,アキバの言語景観についての報告を試みる。

関西方言出自の共通語「~てほしい」の普及とその背景三井 はるみ

現代共通語の中に,関西方言出自の要素があるということはよく知られている。例として,「けむり (煙) 」「うろこ (鱗) 」「ひまご (曾孫) 」等の語彙や,待遇表現体系が挙げられることが多いが,標題の「~てほしい」という形式もその一つである。関西方言出自の形式がどのようにして現代共通語に取り入れられたか,その際,共通語の基盤とされる首都圏方言はどのような動向を示したか,といったことを具体的に明らかにすることは,地域言語である首都圏方言の特質を解明する上で有効な観点の一つである。
本発表では,類義表現である「~てもらいたい」の使用状況と対比しつつ,時期と対象の異なる3回の全国調査と,文献調査の結果から,「~てほしい」が,共通語として普及・定着する過程を確認する。併せて,「~てほしい」が用いられるようになった背景について,首都圏方言における「~てもらう」の用法の変容という観点から考察する。