「多文化共生社会における日本語教育研究」研究発表会

プロジェクト名,リーダー名
多文化共生社会における日本語教育研究
迫田 久美子 (国立国語研究所 日本語教育研究・情報センター 客員教授)
サブプロジェクト名,リーダー名
学習者の言語環境と日本語の習得過程に関する研究
迫田 久美子
社会における相互行為としての「評価」
宇佐美 洋
生活のための日本語
金田 智子
日本語の基本語彙に関する研究
島村 直己
開催期日
平成23年1月23日 (日) 10:30~17:00
開催場所
国立国語研究所 2階 講堂

全体テーマ「多文化共生社会における日本語教育研究」 発表概要

基調講演「多文化共生社会における日本語教育とは?」西原 鈴子 (元東京女子大学 教授)

言語と文化は不可分の関係にありますから,「多文化共生社会」において公正な社会統合を実現するためには,その社会は「多言語共生社会」でなければならないという論理が成り立ちます。しかし実際そうなった場合には,複数言語の話者の間の意思疎通が大きな課題となります。現実的な解決策として,一つ,あるいは少数言語を選択し,域内共通語 (公用語) として公的に制定し,情報の伝達・収集および意思疎通の手段とすることが世界中で広く行われています。これからの日本社会が「日本語」を「公用語」とみなすようになれば,日本語は社会のすべての構成員がその習得に権利と責任を持ち,同時に義務を負う言語ということになるでしょう。そのような発想を基礎として,日本語教育について考えてみたいと思います。

招待講演「日本語教育のための言語研究とは? ―『目に見えない』言語構造の教え方を中心に―」ウェスレー・ヤコブセン (ハーバード大学 教授)

すべての自然言語と同様に,日本語にも日本語なりの言語構造がある。こうした構造を考えなくてもいいように内面化することこそ,言語教育の目指すべき最終的な目標であるが,学習過程において言語構造を顕在化させて導入すべきかどうかが,第二言語習得論,また言語教育の実践ではなかなか結論が出ないまま大いに議論されているところである。当発表では,目に見えないからこそ重要であると思われる以下の三種類の言語構造を中心に,発表者自身の体験に基づいて,言語学,言語教育,第二言語習得論の三つの観点からこの根本問題に迫ることにする。
(i) 項構造 (述語の表す事態に関わっている関与物からなる意味構造)
(ii) 情報構造 (談話の中で未知と既知の情報が相互作用することによって生じる情報のパターン)
(iii) 直接構成要素による文の構造 (文の構成要素がなす縦の構造)

プロジェクト進捗状況発表

  • 発表1 サブプロジェクト「社会における相互行為としての『評価』」 宇佐美 洋
  • 発表2 サブプロジェクト「生活のための日本語」 金田 智子
  • 発表3 サブプロジェクト「学習者の言語環境と日本語の習得過程に関する研究」 迫田 久美子

招待講演「日本語教育のための日本語教育研究とは? ―言語の研究からコミュニケーションの研究への転換―」野田 尚史 (大阪府立大学 教授)

日本語教育の目的は,「聞く」「話す」「読む」「書く」という日本語のコミュニケーション能力を高めることです。しかし,実際の日本語教育では,コミュニケーション能力より日本語の構造や体系を教えていると思われてもしかたがない部分が多いのが現状です。それを変えるために,日本語教育のための研究も言語の研究からコミュニケーションの研究に変える必要があります。
この発表では,日本語教育のためには次の 1. から 3. のような研究が必要だということを具体例をあげながら主張します。

  1. 母語話者が個々の状況でどのように日本語を使っているかという母語話者のコミュニケーションについての研究
  2. 非母語話者が個々の状況でどのように日本語を使っているかという非母語話者のコミュニケーションについての研究
  3. コミュニケーション能力を高める教育はどのように行ったらよいかというコミュニケーション教育についての研究