「通時コーパスの設計」研究発表会

プロジェクト名
通時コーパスの設計 (略称 : 通時コーパス)
リーダー名
近藤 泰弘 (国立国語研究所 言語資源研究系 客員教授)
開催期日
平成22年9月20日 (月) 13:00~16:30
開催場所
国立国語研究所 2階 多目的室

発表概要

通時コーパスを利用した指示詞研究の可能性岡崎 友子 (就実大学 人文科学部 准教授) ,小木曽 智信 (国立国語研究所 言語資源研究系 准教授)

本発表は古典コーパスの利用により,古典語研究の効率化及び成果の精密化が見込まれることを,従来の研究と照らし合わせながら論じていく。古典語研究における大きな課題は古典資料における用例調査にある。対象とする語や時代によって相違する点もあると思われるが,古典資料の形態素解析の実現,共起分析の利用等でどのように研究が変わっていくか,指示詞研究をケースに考えていく。

近世後期江戸語における副詞「必ず」について岡部 嘉幸 (千葉大学 文学部 准教授)

近世後期江戸語資料を見ていると,以下のように禁止表現と共起する副詞「必ず」の用例に出会う。
○女房「そう仕なせへ。必 (かならす) 好男 (いゝをとこ) を持なさんな。」 (浮世風呂)
このように,副詞「必ず」が禁止表現と呼応するものは,現代語としては,違和感を覚えるものである。そこで,本発表では,

  1. 近世江戸語における副詞「必ず」の使用実態
  2. 近世江戸語における副詞「必ず」の特徴

の2点について,コーパスを利用して検討する。さらに,可能であれば,近世後期から現代にかけての「必ず」と呼応する述語の変遷についても言及してみたい。

中古語形容詞の共起語分析と意味記述田中 牧郎 (国立国語研究所 言語資源研究系 准教授)

古典資料のコーパス化と形態素解析が実現することによって,語の共起語分析の充実が見込まれる。従来の古典語研究で蓄積されてきた語の意味についての知見に,コーパスを用いた共起語分析を加えることで,語の意味記述に関する研究を新しい段階に進めることが期待できる。本発表では,情意形容詞と属性形容詞のいくつかを事例に,中古語コーパスの用例群を対象に共起語分析を実施し,意味記述に生かす方法について考える。