「接触方言学による「言語変容類型論」の構築」研究発表会
- プロジェクト名
- 接触方言学による「言語変容類型論」の構築 (略称 : 接触方言)
- リーダー名
- 朝日 祥之 (国立国語研究所 時空間変異研究系 准教授)
- 開催期日
- 平成22年8月2日 (月) 14:00~17:00
- 開催場所
- 北星学園大学 文学部 (〒004-8631 北海道札幌市厚別区大谷地西2-3-1)
発表概要
"Innovative contact-induced phenomena in an endocentric urban community of New Town."ASAHI Yoshiyuki (NINJAL, Associate Professor)
This paper discusses an on-going, innovative sociolinguistic phenomenon of the Japanese language in a high dialect contact situation. In contemporary Japanese societies, numerous types of speech communities have emerged as a result of an increase in demographic mobility and urbanization. New Town is one of the most representative communities whose nature differs from other types of communities in the sense that a new town is an IMMIGRANT and URBAN community. A high degree of contact amongst Japanese dialects occurs when the community starts its formulation. This contact entails a number of on-going, contact-induced change at various levels of language structure.
「ハワイ方言の形成に見られる方言接触現象」朝日 祥之,ダニエル・ロング (首都大学東京 准教授)
本発表ではハワイの日系人・沖縄系島民の間で使われていた日本語 (以下,ハワイ方言と称する) に見られる方言接触現象を取り上げる。その方法として,1970年代から1980年代にかけて実施されたオーラルヒストリー研究で収集された日本語音声資料を用いる。当時の日本語のハワイ方言に見られる方言接触現象,および,それに対するその話者の言語意識に見られる特徴を,それぞれ報告することが本発表の目的である。
「方言音調の変異から言語変容類型論を考えるための試論」太田一郎 (鹿児島大学 教授)
現在発表者は,語アクセントの体系が異なる3つの都市 (札幌,福岡,鹿児島) の若年層に見られる音調の変異 (ディフレージングとダウンステップ) を取り上げ,話者の個人的特性 (社会的プロフィール,言語意識など) と3つの都市の社会的特性との関係から言語変容の類型論をとらえるための方法を計画中である。本発表ではこれまでの研究経過と今後の予定について報告する。
「名古屋近郊および西三河における空間参照枠の地理的・歴史的変異」片岡 邦好 (愛知大学 教授)
本発表の目的は,書き言葉の意味内容にではなく,それがいかに表出されるかに焦点を当て,字体の操作や絵文字といった「パラ / メタ言語的」特性が談話意図の達成にいかに貢献するかを考察することである。その題材として,若い日本人女性によるカジュアルな手紙文を用い,現代の各種メディア談話におけるエモティコンやギャル文字使用にも通底する記号的特徴を探る。本論ではJakobson (1960) の定義を援用し,手紙文において何らかの「情緒的」意図を伝達するために前景化された図画的手段を "Emotive Graphic Sign (EGS)" と称す。具体的には以下の3つの特徴を確認する: EGSは,(1) 記号的流動性に富み,刻々と自己変革を繰り返す媒体であり,(2) 書記体系に遍在する「直接 / 間接指標」として機能し,(3) 通時的な変遷において共通の社会 / 認知的プロセスを具現化する媒体である。