「日本語レキシコンの音韻特性」研究発表会

プロジェクト名
日本語レキシコンの音韻特性 (略称 : 語彙の音韻特性)
リーダー名
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・構造研究系 教授)
開催期日
平成22年 6月6日 (日) 13:00~18:00 (13:00~18:00共同研究会,18:00~20:00研究打合せ会議)
開催場所
京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科 川端キャンパス稲盛 (財団) 記念館 3階 中会議室
アクセス

発表概要

「宮古語大神方言の音声と音韻.類型論的観点から見た南琉球の危機言語の特殊性と重要性.」 Thomas PELLARD (日本学術振興会 特別研究員 / 京都大学)

本発表では筆者が現地調査 (2006.2010年) を行って集めたデータをもとに,南琉球の宮古語大神方言 (以下,大神方言) の音声と音韻について考察を行う。大神島の人口は現在30人弱で,移住した人達を加えても話者の数が100.150人を越えないと思われ,この方言は深刻な消滅の危機に瀕している。大神方言の音韻は日本列島の中で最も特殊で世界の諸言語とくらべても注目に値する。音素目録や音韻構造が単純ながら複雑な面を示しているのが特徴である。例えば,母音が5つで子音が9つしかないが,一方,長さの三段階も区別し (例:/f../「子供」・/ff./「草」・/fff./「櫛は」) ,また母音や有声音を一切含まない,無声子音だけからなる語を有している (例:/kff/「作る」,/ss/「巣」,/kss/「乳」)。

「長崎方言における二型音調の音声実現」 松浦 年男 (北星学園大学)

本発表では,長崎方言の語音調 (アクセント) の音響音声学的な実現を記述し,妥当な音声表示がどのようなものかを検討する。長崎方言は下降調と非下降調の2つの型が弁別的な二型音調方言である。一方で,その音声実現については複数の異なる記述があった。そこで,本発表では2名の話者の単独形と接続形の発話について,Zスコアに変換したF0値を観察する。その結果,A型ではどちらの話者も第2モーラをピークに最終モーラまで直線的な下降が見られた。また,B型では,単独形において,1名の話者は全体が平坦で実現し,もう1名の話者は第1モーラと第2モーラの間でF0が上昇した。また,接続形では1名の話者は第1モーラと第2モーラの間でのみ,もう1名の話者はそれに加えて次末モーラと最終モーラの間で上昇が見られた。この結果に基づき,A型は第2モーラにH*,最終モーラにLが,B型は第2モーラか最終モーラにHが結合される音声表示を提案する。