「日本語変種とクレオールの形成過程」研究発表会

プロジェクト名
日本語変種とクレオールの形成過程 (略称 : 海外の日本語変種)
リーダー名
真田 信治 (国立国語研究所 時空間変異研究系 客員教授)
開催期日
平成22年5月15日 (土) 09:00~17:00
開催場所
サイパン・ビジターセンター (Visitors center theater, American Memorial Park, SAIPAN)

発表概要

「台湾,および他地域における日本語の諸相」真田 信治 (国立国語研究所 時空間変異研究系 客員教授)

この報告で対象とするのは,東アジアの,かつての日本の植民地下で日本語を第二言語として習得した人々のことばについてである。その日本語変種の本格的な記述作業は最近始まったばかりである。特に半世紀以上にわたる第二言語の維況,そしてその変容といった事象を取り上げて研究対象としたものは世界的にもほとんど例を見ない。
報告では台湾での事例を中心に見ていくことにする。植民地の日本語が言語としての合理的な体系へと整理されたのは,そこが脱・標準の地,規範からの自由区であったことに由来する。それは日本国内での言語変化を先取りする,いわば改革の前衛であって,日本語の将来の姿を予測するための指標でもあるのだ。

「サハリンの日本語を記録する」朝日 祥之 (国立国語研究所 時空間変異研究系 准教授)

この報告では,発表者が2003年からサハリンで実施してきている日本語の収録の方法とその意義を取り上げる。サハリンは1905年から1945年の間,その南半分を日本が領有している。その間に現地に日本語が持ち込まれている。
その日本語を使う人たちは日本人,アイヌ人,ウイルタ人,ニヴフ人などであるが,話者の高齢化が深刻な問題となっている。その中での談話収集の方法,その保管方法,意義について述べたい。

「日本語によるマリアナ諸島のオーラルヒストリーを記録する」ダニエル・ロング (首都大学東京 准教授)

この報告で,戦前に日本語を習得したパラオやマリアナ諸島の人々が語っている思いで話しを収録したビデオを集めたデジタルアーカイブの構築について話す。オーラルヒストリーとの価値以外にも,いわゆる「L2日本語」 (第2言語として習得した日本語) の資料として,中間言語や自然習得,言語忘却,ピジン日本語などの観点も分析することが可能である貴重なデータである。