概要2009年にユネスコは,消滅の危機に瀕した世界の言語約2,500のリストを公開した。日本にも消滅が危惧される言語がたくさんある。ほとんどの方言も消滅言語である。日本から言語の多様性が失われるということは,日本の文化の多様性も失われるということを意味する。多様性を守るために,国語研では方言を調査してデータを残しておく活動と,地域の子どもたちに方言を伝える活動を行っている。ここでは,宮崎県椎葉村と共同で5年前から行っている『椎葉村方言語彙集』の作成の例と,標準語から日本語諸方言を検索することができる『日本語諸方言コーパス』の構築の例を紹介する。
概要コーパスとは何かを説明し,実際にどのように使われるかの例として,「日本」が「ニホン」と発音されるか「ニッポン」と発音されているかを『日本語話し言葉コーパス』を利用して検索した結果に触れる。
概要国語研では,日本語の歴史を研究するためのコーパスを構築している。奈良時代に成立した『万葉集』から明治・大正時代の雑誌や国語教科書まで,すべての時代にわたって重要な資料を集め,すべての文章中の単語に読みや品詞などの情報を付与したものである。この『日本語歴史コーパス』を使った研究例として,明治時代の国語教科書に現れる表現をとりあげ,形容詞や動詞の丁寧形がどのように変化してきているのかについてデータにもとづいて述べる。