富士通のかな漢字変換 (OAK, Japanist) に昔から (ひょっとしてワープロの時代から?) 備わっている機能に、変換未確定状態で句読点を入力すると、未確定文字列が確定され、同時に句読点も即座に全角で確定入力されるというものがある。この機能の軽快さというか無駄のなさに一旦慣れてしまうと、どんなに文節区切りの推定や漢字変換の正確さにおいて他のかな漢字変換のほうが優れていても、ちょっとやそっとでは他のものに乗り換えられなくなる。筆者は、ただこれだけの理由で過去10年以上、Linuxに乗り換えることができたらどんなにかよかろうと思いつつも、cygwinなどをインストールして仕方なくWindows PCを使い続けてきた。(JapanistはWindowsでしか動かないので。) Linuxでwineを使ってなんとかJapanistを動かせないか、などというほとんど気違いじみたことまで考えて、何時間も時間を無駄にしたこともある。 非常に優れた機能だと思うのだが (普通の日本語入力のデフォルトの挙動を疑ったことのない人は考えてみてほしい--そもそも、普通に日本語を書いていて、半角と全角の句読点を使い分ける必要がある状況など、どれくらい生じるだろうか)、マイナーなためか、MS-IME、ATOK、Google日本語入力などの普通のかな漢字変換にはこの機能は実装されていない。さらに悪いことに、これらのかな漢字変換には、「句読点入力で自動変換」などという、似て非なる機能が存在し、「句読点で即確定」という可能性はそもそも、その存在の可能性すら否定されているかのようである。「句読点入力で自動変換」は、「句読点で即確定」に慣れた人間にとってはこの上なく気持ちの悪い動作をするため、代替機能としてまったく役に立たない。 ところが、ある事情により最近LinuxをWindowsと併用することが多くなって、Linux上での日本語入力を快適にしたいという欲求を抑えがたくなった。試しにと思っていろいろ触ってみて、emacs上でmozcを使うという方法を試してみたところ、何と、「emacs上でmozc」という環境に限定すれば (個人的には、日本語の入力は9割方emacs上で行うのでこれで実用上問題ない)、少し.emacsに設定を足すだけで「句読点で即確定」が簡単に実現できるということを発見した。あまりにもあっけなく、あまりにもひねくれた理由でWindowsにしがみつき続けてきたその唯一の理由がなくなってしまったので、少々拍子抜けしてしまった。 以下にその設定をメモしておく。(多分この情報を有益だと思う人はほとんどいないと思うが。) <pre> (require 'mozc) (defun mozc-insert-str (str) (mozc-handle-event 'enter) (toggle-input-method) (insert str) (toggle-input-method) ) (add-hook 'mozc-mode-hook (lambda () (define-key mozc-mode-map "," '(lambda () (interactive) (mozc-insert-str "、"))) (define-key mozc-mode-map "." '(lambda () (interactive) (mozc-insert-str "。"))) )) </pre>