甑島方言アクセントデータベースは、甑島(鹿児島県薩摩川内市)の方言音声を教育研究に資する目的で公開したものです。甑島の各集落について2名ずつの話者のアクセントを、各話者の許諾を得て公開しています。データベースのもととなったアクセント資料は、下記のメンバーによる過去10年間にわたる甑島アクセント合同調査で得られたものです。

  • 窪薗 晴夫(国立国語研究所・教授)
  • 上野 善道(東京大学・名誉教授)
  • 木部 暢子(国立国語研究所・教授)
  • 久保 智之(九州大学・教授)
  • 松森 晶子(日本女子大学・教授)
  • 新田 哲夫(金沢大学・教授)

本データベースで提供するデータ(調査語彙リスト、音声ファイル、音声詳細情報)を研究・教育に利用し、論文や記事を執筆する場合は、参考文献として以下の書誌情報(日本語または英語)を記載してください。

窪薗晴夫、上野善道、木部暢子、久保智之、松森晶子、新田哲夫(編) (2016) 「甑島方言アクセントデータベース」<http://koshikijima.ninjal.ac.jp/>

Kubozono, Haruo, Zendo Uwano, Nobuko Kibe, Akiko Matsumori & Tetsuo Nitta (eds.) (2016) Koshikijima Accent Database. <http://koshikijima.ninjal.ac.jp/>

見出し一覧

甑島と甑島方言

甑島は鹿児島県の西40キロの東シナ海に浮かぶ列島で、上甑島、中甑島、下甑島の3つの島から成っています。南北に38キロ、東西に10キロの広がりを持つこの列島には10を超える集落がありますが、一昔前までは陸路による移動がむずかしかったため、集落間の言語差異が大きいのが甑島方言の特徴となっています。

甑島方言は鹿児島方言や長崎方言と同じく二型(にけい)アクセントの体系を成しており、すべての語は2種類のアクセントグループ(A型とB型)のいずれかに属します。A型とB型の所属語彙は鹿児島方言とほぼ同じです。

甑島および甑島方言の詳細

収録語彙

このデータベースには2モーラ以上の長さの名詞(【基本語彙リスト】約200語)について、その単独形と名詞句表現(語形)を収録しています。「雨」という語を例にとると、次のような表現が収録されています。「…やなあ」(=「…だなあ」)は集落や話者により表現が異なります。また話者や単語によって「…が」と「…ば」(=「…を」)の選択も異なっています。

(例)雨、雨やなあ、雨が/ば、雨がよか、雨から、雨からも

話者によっては【基本語彙リスト】の約200語に加えて、【モーラ&音節構造別リスト】の一部(もしくはすべて)を収録している場合もあります。

調査語彙リスト

話者情報

甑島方言調査で得られた音声データから各集落2名ずつを選択し収録しました。話者の生年(西暦)と性別(M=男性、F=女性)は次の通りです。集落は北から南の順に並べてあります。

上甑島

  • 里集落:話者A(1929, M)、話者B(1945, M)
  • 桑之浦集落:話者A(1944, M)、話者B(1944, M)
  • 瀬上集落:話者A(1925, M)、話者B(1940, M)
  • 中甑集落:話者A(1941, M)、話者B(1954, M)
  • 江石集落:話者A(1931, M)、話者B(1932, F)

中甑島

  • 平良集落:話者A(1932, M)、話者B(1940, M)

下甑島

  • 鹿島集落:話者A(1930, M)、話者B(1956, M)
  • 手打集落:話者A(1960, M)、話者B(1961, M)

謝辞

このデータベースを作成・公開するまでには大勢の方々にご協力いただきました。まず、教育研究用に公開の許諾を下さった方言話者の皆様に感謝申し上げます。デジタルデータの編集にあたっては竹安 大氏(福岡大学)、旧サイトの開発では㈱キクミミ、当サイトの開発ではLago NLP(代表 赤瀬川 史朗)にお世話になりました。また技術面では籠宮隆之氏(千葉大学)から助言をいただきました。皆さんのご協力とご尽力に感謝いたします。

予算面では、下記の研究プロジェクトの支援を受けています(研究代表者は窪薗晴夫)。

  • 国立国語研究所基幹型共同研究プロジェクト「日本語レキシコンの音韻特性」
  • 大学共同利用機関法人人間文化研究機構連携研究「アジアにおける自然と文化の重層的関係の歴史的解明」のサブプロジェクト「鹿児島県甑島の限界集落における絶滅危機方言のアクセント調査研究」
  • 科学研究費補助金基盤研究(A)「日本語のアクセントとアクセント類型論」(22242011)
  • 同基盤研究(A)「日本語諸方言のプロソディーとプロソディー体系の類型」(26244022)

このアクセントデータベースが日本語音声の教材や研究材料として活用されることを祈っています。

2016年3月 窪薗晴夫(国立国語研究所)

関連資料・関連サイト

お問い合わせ

以下のメールアドレスまでお問い合わせください。

kubozononinjal.ac.jp