こちらのページでは、「留学生ピア・レスポンス」の教室談話データをどのように収集したのか、調査の内容を説明します。
1. 目的と意義
近年、日本語教育の現場では、学習者同士が相互に学びあう協働学習への教育方法が広まりつつあります。それにともない、日本語教師は学習者が自律的かつ創造的に学ぶのをサポートするファシリテーターとしての役割も求められるようになっています。教師が学習者の学びをどのようにファシリテートすればいいか、それを知るためにはまず学習者同士がどのように相互に学びあっているかの実態を明らかにすることが必要です。
そこで、アカデミック・ライティング技術の習得を目的とした留学生のピア・レスポンスの授業において、他の学習者のアドバイスや教師の添削・コメントが学習者の作文の推敲にどのような影響を与えているか、日本語学習者の文章執筆過程を可視化するため、教室談話を調査しデータを収集しました。
2.調査協力者
本ピア・レスポンスの授業では下記の通り、多様な国籍の参加者が集まり、調査に協力してくれました。
国籍 | 人数 |
---|---|
中国 | 8名 |
台湾 | 4名 |
韓国 | 2名 |
オーストラリア | 2名 |
セルビア | 1名 |
合計 | 17名 |
3.調査方法
全15回の授業は、以下の「授業テーマ一覧」のような流れで進められました。このうち8回分の授業で、学習者同士のグループディスカッションの音声をICレコーダーを用いて録音しました。
授業回数 | 授業テーマ | 談話データの有無 |
---|---|---|
第1回 | オリエンテーション | × |
第2回 | 研究テーマを検討する | × |
第3回 | 基本概念に親しむ | 〇 |
第4回 | 先行研究を読みあう | 〇 |
第5回 | 研究テーマを説明する | 〇 |
第6回 | 「はじめに」と先行研究を表現する | 〇 |
第7回 | 分析方法とデータを議論する | 〇 |
第8回 | データベースを作成する | × |
第9回 | 分析結果を集計する | × |
第10回 | 分析結果をまとめる | × |
第11回 | 分析結果と考察を表現する | 〇 |
第12回 | 結論と要旨をまとめる | × |
第13回 | 論文を推敲する | 〇 |
第14回 | 成果発表の準備をする | 〇 |
第15回 | 成果を発表する | × |
他の学習者との対話が文章の執筆にどのように影響しているかを見るため、授業期間内に3つの段階に分けて作文を提出してもらいました。最終的に論文として完成させることをめざして、1回目は「はじめに・先行研究」(授業内に配布した文献リストはこちら)、2回目は「資料・方法・分析」、3回目は「論文最終版」です。
4.調査協力者への説明事項
調査協力者には、「調査参加者の方への説明文書・同意書」を用いて、「研究の目的・意義」「研究の方法」「調査の場所と期間」の他、「希望があれば、ほかの参加者の個人情報保護や研究の独創性の確保に支障がない範囲で、研究に関する資料を開示すること」「調査への参加が任意であること」「個人情報の取り扱い」などについて説明をしました。
また、調査への参加に同意しなかったり、途中で同意を取り消したりしても、その後の授業での対応や評価などに影響はないことを説明しました。
5.データの保存方法
調査で得られたデータは、国立国語研究所内のみアクセス可能なサーバ内蔵のハードディスク、及びバックアップ用のハードディスク内に保存し、アクセスを許可した者以外利用できないように管理しています。また、匿名化されていない文書については、同所内にて施錠保管しています。