調査内容

こちらのページでは、「ピア・リーディング」の教室談話データをどのように収集したのか、調査の内容を説明します。

1.目的と意義

本授業は、学習者の自己との対話、他者との対話、教師を交えた全体の対話という「三つの対話」を用いて、正確な理解と批判的な読みという学術的文章を読むのに必要な読み方を身につけることを目的としたものです。学習者が記入した課題シート、参加したグループ・ディスカッション、授業の各段階で受けたインタビューデータに基づいた分析により、ピア・リーディング授業がうまくいくための要素を明らかにし、ピア・リーディング授業の指導法の確立を目指します。

2. 調査協力者

調査協力者は以下の表のとおりです。

調査協力者
調査協力者ID 性別 母語 所属 専門 学習暦 滞在暦
A ポルトガル語 交流生 法学 7年3ヶ月 2年3ヶ月
B 韓国語 学部生 言語学 10年 7ヶ月
C アラビア語 研究生 言語学 4年 2年
D 韓国語 交流生 商学 8年 1年
E 韓国語 交流生 言語学 4年 7ヶ月
F 韓国語 交流生 言語学 6年3ヶ月 7ヶ月
G 韓国語 交流生 言語学 9年 7ヶ月
H 中国語 学部生 商学 4年5か月 6ヶ月
I 中国語 学部生 商学 4年6ヶ月 4年6ヶ月
J 韓国語 研究生 言語学 6年6ヶ月 7ヶ月
K ポルトガル語 交流生 社会学 16年4ヶ月 5年1ヶ月
L 韓国語 交流生 社会学 7年 1年
M 中国語 研究生 言語学 3年6ヶ月 6ヶ月
N 韓国語 研究生 社会学 2年2ヶ月 1年2ヶ月
O ロシア語 学部生 言語学 6年 1年
P 韓国語 学部生 商学 4年 1年1ヶ月
Q 韓国語 学部生 経済学 1年8ヶ月 8ヶ月
R 中国語 研究生 商学 3年 1年
S 中国語 学部生 言語学 8年 1ヶ月
T ポルトガル語 院生 言語学 11年 5ヶ月
U 韓国 交流生 社会学 3年 1年1ヶ月
V 英語他 学部生 法学 3年 1年1ヶ月

(日研生=日本語・日本文化研修留学生、研究生=大学院研究生、交流学生=交流留学生)

3. 授業内容

オリエンテーションを除く全14回の授業のうち、前半の7回は深く正確に読むこと、後半の7回は批判的・創造的に読むことを目的としています。毎回の授業は下記の表のような内容で、課題シートにもとづいて行われました。

授業内容一覧
授業回数 授業項目 課題の内容
1
キーワードを定義する 文章のキーワードを選び、理由を考える
2
行間を読む 文章を読んで、「フォーリナー・トーク」「ティーチャー・トーク」の分かりやすい実例を考える
3
接続詞を入れる 文中にある空欄に入る接続詞を考えて入れ、文章のもっとも大切な接続詞及び接続詞が果たしている役割を考える
4
予測をする 文章の空欄に入る内容を予測し、数文で表現する
5
キーセンテンスの連鎖を見る 文章を読んで、もっとも重要な文を3文、重要な文を12文抜き出す
6
文章構造図を書く 文章を読んで、文章構造図を作成する
7
課題1:要約文を書く 文章を読んで、要約文を書く
8
事例を収集する 文章に載っていない男性語、女性語と若者語をたくさん挙げる
9
参考文献を探す 参考文献を調べ、「フォーリナー・トーク」「ティーチャー・トーク」の定義を考える
10
疑問点に反論する 文章を読んで、疑問や誤っていると思う点を見つける
11
代替案を考える 文章で挙げられた三分類をよりよく修正する
12
自分の関心を説明する 文章を読んで、自分にとって面白い文を抜き出す
13
他者の関心とすり合わせる 文章を読んで、「日本語とはどんな言語か」について、ワールドカフェの形で他者と自由に意見交換をする
14
課題2:書評を書く 文章を読んで、書評を書く

授業の流れ

ピア・リーディングを通じて学習者自身が自己の読み方を可視化・相対化できるように、1回90分の授業を3つの時間に分けて授業を行いました。
最初の30分は、課題に独力で取り組む中で、自分がどのような読み方をしているかを学習者自身に自覚してもらいます。
次の30分は、学習者同士が互いの読み方を交換する中で、他者の読み方を意識してもらいます。
そして最後の30分は、各グループの話し合いの内容をクラス全体で共有する中で、学習者に読み方の相対性と多様性を学んでもらいました。

4. 資料一覧

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