研究班1
「日本語国際センサスの実施と行動計量学的研究」



(国立国語研究所情報資料研究部長)

研究班1では,国際社会およぴ国際化した日本のなかで日本語が現在どのような範囲で,ま たどのような状況で使用されているか,さらには今後どのような方向に動いていくかを明ら かにするための「日本語国際センサス」を中心とする調査研究を行うこととしています。
この日本語国際センサスで扱う事項や調査方法は多岐にわたっていますが,中核となるのは ,
A.日本語観国際調査(ナショナルサーべイ)
B.主要国事例調査
と名づけるものです。
「A.日本語観国際調査」は,海外約30か国の国民を対象とする大規模調査で,主として 関心ある国や言語(日本・日本語を含む),言語観・言語イメージ,外国語・外国文化との 接触形態・接触度などの比較・対照調査です(実施は各国の調査会社に依託)。本調査は第 3~4年次(平成8~9年)に実施する予定で,目下準備作業に取り組んでいます。この調 査は,各国の一般的な言語状況を知る上では有効ですが,細部についての情報を得るという 点では弱さがあります。

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そこで,Aの調査では扱いにくい,または掘り下げにくい事項について(日本語そのものの 普及状況や日本語学習の動機・問題点など)を深めるために,日本およぴ海外の主要数か国 の大学生や日本語学校就学生などを対象とした「主要国事例調査」を企画しています。内容 はまだ充分固まっているわけではありませんが,たとえば,次のような事項が検討されてい ます。
まず,国内事例調査としては,
個人対象調査:留学生など日本語学習者,国内のタト国人労働者の言語状況調査,中国残留孤 児帰国者や帰化人などの日本語,海外帰国子女の日本語など
メディア調査:外国語放送・報道における各種言語など
また,海外調査としては,
個人対象調査:学生を対象とする日中・日韓等のイメージ調査,大学生や日本語学習者を対 象とした日本語観調査,日本系企業従事者を対象とした調査,移民の日本語調査など
メディア調査:各国のマスメディアに出現した日本語,日本(文化)の記述に関する実態・ 意識調査、広告やマニュアルなどの言語
これらはインテンシブ調査研究といえるものですが,同じような手法で,Aの調査法を開発 するためのいくつかの予備的、実験的調査も計画されています。

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その他,特定の機関あるいは特定の個人に尋ねるとおおよそのことが分かるような事項を対 象とする「聴取調査」も行う予定です。つまり,各国の研究機関・研究者,各国大使館,現 地の日本語教育機関,商社等を通じて情報を得る言語事情・言語環境調査とでもいうもので す。その内容は,以下のようなものです(観察調査も含む)。
国 内:市役所・役場等,ホテル・観光施設等での外国語対応状況(パンフレットや標識等の 多言語表示,接客員の配置など)
海 外:各国の自国語研究所およぴそれに準ずる機関を対象とした各国の言語状況や言語計画 等の調査,各国のマスコミ機関,各国の日本語教育機関を対象とした日本語学習者・教育状 況に関する調査,商社等の海外関連企業など日系企業を対象とする職場での使用言語調査, 公共施設での外国人対応状況調査など
また,この研究では,当然ながら,既存資料の収集・活用ということが重要になってきます 。これは比較的早い時期にデータベース化して何らかの形で公開したいと考えています。

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以上のように,研究班1で行うべき課題は非常に多く,限られたメンバーだけでこなすこと は不可能です。そこで本班では,課題によっては他の研究組織などと提携しつつ研究をすす めることとしています。また,新たに研究会を構成し,これを土台に仕事を進めることも検 討しています。その手始めとして,各国・各言語圏での言語政策・言語計画を研究するため の研究会を開催したいと考えています。この会はオープンな形のもの(ただし継続性をもつ もの)にしたいと思っていますのでご参加ください。なお,第1回研究会は11月14日午 後,国語研で行います。


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