この委員会は,分かりにくい「外来語」について言葉遣いを工夫し提案することを目的としています。
近年,片仮名やローマ字で書かれた目新しい外来語・外国語が,公的な役割を担う官庁の白書や広報紙,また,日々の生活と切り離すことのできない新聞・雑誌・テレビなどで数多く使われていると指摘されています。例えば,高齢者の介護や福祉に関する広報紙の記事は,読み手であるお年寄りに配慮した表現を用いることが,本来何よりも大切にされなければならないはずです。多くの人を対象とする新聞・放送等においても,一般になじみの薄い専門用語を不用意に使わないよう十分に注意する必要があります。ところが,外来語・外国語の使用状況を見ると,読み手の分かりやすさに対する配慮よりも,書き手の使いやすさを優先しているように見受けられることがしばしばあります。
そもそも,どんな言葉を使うのが適切かということは,話し手・書き手の意図,想定される聞き手・読み手,話題,使われる環境など,その時々の様々な条件によって変わります。同じ内容の話をするにしても,大人に話すときと子どもに話すときとでは,使う単語,声の調子,話す速さ,文の長さなどが変わってきて当然です。また,同じ大人でも,相手がその話題に通じているかどうかによって,言葉選びや言葉遣いにおのずと違いが出てきます。相手や場面に応じて,適切な言葉遣いが変わることにいつも留意することが大切です。このことは,私たちの言葉について国語審議会がかねて提言してきた「平明で,的確で,美しく,豊かであること」を実現する具体的な努力の一つと考えます。
外来語には,これまで日本になかった事物や思考を表現する言葉として,日本語をより豊かにするという優れた面もあります。しかしその一方で,むやみに多用すると円滑な伝え合いの障害となる面も出てきます。とりわけ官庁・報道機関など公共性の強い組織が,なじみの薄い外来語を不特定多数の人に向けて使用するとき,そこに様々な支障が生じることになります。これらの組織ではそうした事態を招かないよう,それぞれの指針に基づいて言い換えや注釈などの工夫を施した上で外来語を使用することが大切です。それと同時に,その指針や工夫を公共の財産として共有する方向に進んでいくことが望ましいとも考えます。
以上のような認識に立って,この委員会では,まず国の省庁の行政白書を,その後は新聞や雑誌など公共性の強いものを対象として,一般に分かりにくい外来語が使われていないか,使われていればそれに換えるべき分かりやすい言葉や表現としてどんなものがあるかを検討します。そして,それに基づいて個々の外来語に対する考え方やその言い換え例を含めた,緩やかな目安・よりどころを具体的に提案することを目指しています。この委員会の提案がきっかけとなり,より多くの人々がそれぞれの立場で,私たちの大切な日本語について考えていく機会が生まれることになれば幸いです。
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