コラム - 擬音語・擬態語の語形の特徴は? -
日本語には擬音語・擬態語が2,000語近くありますが,その語形にははっきりした特徴が見られます。日向・笹目(1999)は,『擬音語・擬態語辞典』(浅野,1978)に取り上げられている擬音語・擬態語の総数1,647語をその語形から分類し,それぞれがいくつずつあるか調査しています。
その調査によると,まず語形として一番多いのは,「わくわく」「どきどき」のように同じ音が繰り返される型です。仮に第一の音を「A」,二番目の音を「B」とすると,この型は「ABAB」型というふうに表されます。「ABAB」型は全部で419語ありますから,全体の4分の1近くになります。2番目に多いのは「きらっ」「にこっ」のような「ABっ」型で212語です。3番目は「ぐるり」「ずばり」などの「ABり」型で141語,4番目は「すっきり」「しっかり」などの「AっBり」型で103語です。そして「がちゃん」「ぽかん」などの「ABん」型が102語で続いています。
もちろん,これらの型にあてはまらない擬音語・擬態語もありますが,上にあげた上位5つの型にはすべてある共通の語形が見られます。それは,(1)繰り返し,(2)促音「っ」,(3)撥音「ん」,(4)「り」です。このほかに,(5)母音の長音化(「がーん」「ばちゃーん」等)もよく見られる形です。以上の5つの特徴的な語形によって,擬音語・擬態語と他の一般の語を形の上から区別することができるため,これらは「オノマトペ標識」と呼ばれています。(注:「オノマトペ」は擬音語・擬態語の総称です)
ですから,ある音や様子を表している語がこの「オノマトペ標識」を持っている場合,その語は擬音語・擬態語である可能性が高いということが言えるわけです。また,擬音語・擬態語では,一つの語基(語が持っている基になる音)と「オノマトペ標識」を組み合わせることによって,非常に多くの派生形を作ることができます。例えば、「ばた」という語基から,「ばたん」「ばたっ」「ばたり」「ばたばた」「ばたーん」「ばったり」のように意味の似た語が次々とできています。このことも擬音語・擬態語の大きな特徴です。
参考文献:日向茂男・笹目実(1999)「語形からみた擬音語・擬態語2」『東京学芸大学紀要第2部門人文科学50』