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コラム - 韓国語の擬態語と日本語の擬態語の比較について -

 日本語は擬音語・擬態語が豊富な言語であると言われていますが,実は世界の言語の中で擬音語・擬態語がもっとも多いのは韓国語でその数は約8千,小型の辞書でも2千から3千語は紹介されているくらい豊富です。どうして韓国語にはこれほどたくさんの擬音語・擬態語が存在するのでしょう。その理由として二つの点を挙げることにします。

 まず,考えられるのは韓国語の文字数の多さです。韓国語にはたくさんの子音・母音が存在するため,それらの組み合わせによって微妙にニュアンスの違う擬音語・擬態語をたくさん作ることができます。その一つの例として,韓国語は年齢や性別によって笑い声の擬音語・擬態語が異なる傾向が見られます。例えば,日本語は「笑い」を表す擬音語・擬態語として「にこにこ」「にこっと」「にやにや」「にやり」「くすくす」「けらけら」「げらげら」など,約20語近くありますが,「げらげら」を決して女性には使わないとか,「くすくす」は若い女性にしか使わないという区別はありません。ところが,韓国語では笑っているのが誰なのかによって用いる表現が変わってきます。例えば,赤ちゃんが「にこにこ」している場合なら,「バングッバングッ()」ですが,これを大人に使うことはありません。大人だと「シングルバングル()」「セングルセングル()」になります。また,「げらげら」笑っているのが,男性なら「コルコル()」になるのですが,これを女性や子供に用いることはありません

 次に,日本語では「ごろごろ」「どんどん」のように一語の擬音語・擬態語が複数の意味を持つことが多いですが,これを韓国語に訳すと全部異なる表現になってしまうことです。例えば,雷の音を表す「ごろごろ」は「ウルルカンカン()」,「荷物がごろごろ転がる」は「デグルデグル()」,「休日に家でごろごろする」は,「ドゥィングルドゥィグル()」,目の中が「ごろごろ」するのは,「目の中に何か入ったようだ」のように特別な擬音語・擬態語を用いるのではなく,その状況を具体的に描写します。

子音 [約20語近く・・・]
うふふ,からから,くくっ,くすくす(マンガで),くっくっ,けたけた,げたげた,けらけら,げらげら,ころころ,にこり,にこにこ,にたにた,にたり,にっこり,にやり,にやにや,にんまり,ぷっ,ふっふ,へっへっ,へらへら

[参考文献]
竹林玲子(2002)「ことばの採集—韓国フィールドワーク報告書—」和光大学表現学部文学科
野間秀樹(2001)「オノマトペと音象徴」『言語』8月号,第30巻 大修館書店
許卿姫(1989)「日・韓両言語における音象徴語の比較対照的研究」日本語教育68号 日本語教育学会
生越まり子(1989)「日本語の擬音・擬態語教授上の問題点−朝鮮語韓国語を母語とする人々に対して」−日本語教育68号 日本語教育学会