日本語教育における学習項目一覧と段階的目標基準の開発
趣旨
日本社会の一員として地域社会に根付き,職場や学校等で活躍できるようになるまでに外国人が身につけるべき日本語能力とは何か。この日本語能力を明らかにすることは,国内における外国人の受け入れ拡大に関わる重要課題である。国立国語研究所は,日本で生活するために必要な日本語能力を明らかにし,その結果を日本語教育諸機関に利用しやすい形で提供することをめざして,本調査研究を実施する。
本調査研究では,日本語におけるコミュニケーション能力について,日本語の使用実態,学習者の日本語力の向上に伴う日本語使用状況の変化等をもとにとらえなおし,その枠組みと構成要素の明確化を目指す。その上で,学習項目の一覧と段階別基準を開発し,これらを,日本語教育機関が日本語学習内容の選定やカリキュラムの作成をしたり,日本語教育関係者が教材や試験の開発を行ったりする上で参考にできる資料として提供する。
尚,コミュニケーション能力に関する研究では,従来は口頭コミュニケーションが対象となることが多かったが,本研究では「書く」能力にも注目する。この能力は他者との接触の機会を作り,言葉のやりとりを成立させ,人間関係を構築するための有効な手段の一つである。「書く」能力を学習の初期段階から身につけるべき能力,身につけられる能力としてとらえ,積極的に調査研究の対象とする。
研究期間
2006年4月〜2011年3月(平成18年度〜平成22年度)
内容
(1)コミュニケーション能力の枠組みと構成要素の同定
(2)学習項目一覧と段階的目標基準の作成
平成18年度実施内容
(1)日本語コミュニケーション能力に関する先行研究の分析
(2)海外の言語教育政策におけるコミュニケーション能力の捉え方の分析
(3)日本語を介するコミュニケーション場面のリスト化
(4)情報交換・意見交換の場としての「コミュニケーション能力研究会」の開催
平成19年度実施内容
(1)コミュニケーション場面のリスト化:外国人が日本での生活で遭遇するコミュニケーション場面のリストを,海外における移民等に対する自国語教育,国内各機関のシラバス等を参照しつつ作成する。
(2)日本語の使用実態調査<予備調査>及びニーズ調査:上記(1)で作成したリストをもとに,日本語の使用実態及び外国人と日本人双方のニーズについて調査する。
(3)情報交換・意見交換の場としての「コミュニケーション能力研究会」の開催
(4)本調査実施(平成20年度)に向けた,共同研究員体制の充実