「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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23.腎不全(じんふぜん)

(類型B-(1))正しい意味を明確に説明する

[複合] 慢性腎不全(まんせいじんふぜん)(類型B)
[関連] 肝不全(かんふぜん)(類型B) 心不全(しんふぜん)(類型B) 呼吸不全(こきゅうふぜん)(類型B)

まずこれだけは

腎臓(じんぞう)の働きが大幅に低下した状態

少し詳しく

 「腎臓(じんぞう)の働きが悪くなり,からだの中の捨てなければならないものや余分な水分が,血液の中にたまってしまう状態です」

時間をかけてじっくりと

 「『腎不全(じんふぜん)』の『腎』は『腎臓』のこと,『不全』は『正常に働かなくなった状態』のことです。『腎不全』というのは『腎臓が正常に働かなくなった病気の状態』のことで,病気の名前にもなっています。からだの中をめぐってきた血液の中の要らないものや余分な水分は,腎臓の働きで尿として捨てられます。腎不全になると,捨てなければならないものが血液中に残ったままになり,からだと心の両面に悪影響が出てきます」

こんな誤解がある

 「不全」という言葉から,「働きが十分でないだけで,まだまだ大丈夫」と軽く見る傾向がある。症状がなく痛みがないからといって,油断をすると危険であり,放っておいて悪化すると,命にかかわることもあることを伝えたい。

言葉遣いのポイント
  1. 「腎不全(じんふぜん)」という言葉の認知率は高いが(96.7%),意味を正しく理解している人ばかりではない(理解率71.6%)。正しい意味が理解してもらえるように丁寧に説明したい。
  2. 腎臓の働きがどれぐらい低下しているかが明確に伝わるように,例えば,「二十歳ごろを100%とした場合,今は○○%程度に低下しています」などと説明すると効果的である。
患者はここが知りたい

腎臓(じんぞう)は腰のあたりに左右二つあるが,腎不全はどちらも同時にかかる病気か,それとも一方だけか,一般に,二つある(対をなす)臓器については,一方がなくても大丈夫かという疑問が患者側にはある。この疑問について,例えば次のように答えてみてはどうか。

「一般に二つある臓器は,一方が働かなくなるようなできごとが起きても,残った一つで働きが維持できます。ただし,腎臓病は二つある腎臓が同時に病気になり,同じように障害が進みます」

複合語

慢性腎不全(じんふぜん)(類型B)

[説 明]
 「腎臓の働きが徐々に悪くなって,腎不全の状態になったもののことです。治りにくく長引くことを『慢性』と言います。少しずつ腎臓の働きが低下するのが『慢性腎不全』です」
関連語

「不全」の付く言葉(肝不全,心不全,呼吸不全など)(類型B)

[説 明]
 「『不全』は,働きが十分でないというだけでなく,からだの大事な働きができなくなることで,危険な状態になる場合に使われる言葉です。『肝不全』は,肝臓の働きが悪くなって,肝臓で分解されて捨てられるはずの物質が,血液の中に残ったままになることです。『心不全』は,心臓の働きが悪くなり,心臓から血液が送り出せなくなることです。『呼吸不全』は,呼吸がうまくいかなくなり,血液の中に酸素が送り込めなくなることです」
©2008 The National Institute for Japanese Language