「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

設立趣意書
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35.既往歴(きおうれき)

(類型B-(2))もう一歩踏み込んで明確に説明する

[関連] 既往症(きおうしょう)(類型B)

まずこれだけは

病歴
これまでにかかった病気
これまでかかったことのある病気や手術などの診療の記録

少し詳しく

 「これまでかかった病気の記録のことです。現在の病気の診断や治療法の選択に重要な手掛かりとなります。『既往症』とも言います」

時間をかけてじっくりと

 「これまでかかった病気の履歴のことです。大きな病気だけでなく,薬の副作用,アレルギー,交通事故,出産経験,健康状態なども含まれます。今かかっている病気の診断に役に立ちますし,患者さんの体質を確認し,治療法の向き不向きを判断するための重要な手掛かりにもなります」

こんな誤解がある

 虫垂炎など,軽かったと感じている病気は,既往歴には含まれないと誤解している患者がいる(8.1%)。特に,「大きな病気をしたことはありますか?」と聞くと,大きな病気かどうかの判断を患者に求めることになり,そのような誤解が生じる可能性がある。

言葉遣いのポイント
  1. 「既往歴」「既往症」などは,病院に何度かかかった人であれば見聞きした経験があり(認知率73.2%),使われる場面から類推して大体の意味は理解できる言葉ではある(理解率71.8%)。しかし,「既往」という言葉は日常語では使わないため,はっきりとした意味は取りにくい。「病歴」,「これまでにかかった病気」などという言葉を使う方が分かりやすい。問診票には,「これまでにかかった病気」などと書くと分かりやすい。
  2. 現在の病気の診断や治療に役立てる重要な資料という意味合いを強調するために,「病気の履歴書」というたとえを用いることも効果的である。
ここに注意
  1. 既往歴を聞かれた患者は,聞かれたのはこの程度だろうと,自分の判断で答えてしまいがちである。答えるべき範囲や程度を誘導しながら聞き出す工夫が必要である。主な既往例を列挙しておき,チェックを入れてもらう方法も有効である。
  2. 現在の病気の診断や治療法の選択にとって,なぜ既往歴を知ることが大事であるかを言い添えたり,問診票に書き添えたりすることで,患者の理解が進み,申告漏れが減る効果が期待できる。
  3. アレルギーや産科歴は,問診表であれば別項目を立て,聞き取る場合は既往歴とは別に尋ねた方が,混乱も少なく漏らす可能性も減少する。
©2008 The National Institute for Japanese Language