「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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48.貧血(ひんけつ)

(類型B-(3))混同を避けて明確に説明する

[複合] 脳貧血(のうひんけつ)(類型B) 鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)(類型B) 
[関連] 赤血球(せっけっきゅう)(類型B)

まずこれだけは

血液の中の赤血球や,その中の色素が減っている病気

少し詳しく

 「血液の中の赤血球(→[関連語])や,その中の色素が減った状態を言います。その色素のことを『ヘモグロビン』と言います。赤血球やヘモグロビンは,全身に酸素を運ぶ働きをしているので,不足すると酸素が足りない状態になり,めまいや息切れなどの症状が現れます。気持ち悪くなって立ちくらみを起こして倒れることを『貧血』と言う場合がありますが,ここで言う貧血とは別の病気です」

時間をかけてじっくりと

 「血液中の赤血球や,赤血球に含まれる色素であるヘモグロビンが減り,異常な色素になって,全身の細胞に酸素を運ぶ働きに異常が起きることを『貧血』と言います。酸素を運ぶ力が足りなくなると,疲れやすくなり,動悸(どうき)・息切れ,めまい,頭痛などの症状が起こります。貧血の原因には,赤血球を作ることができない,赤血球が壊されている,知らないうちにどこからか出血している,などのことが考えられます。原因によって,治療法も異なりますので,医師の診断をきちんと受ける必要があります。気持ちが悪くなって立ちくらみを起こして倒れることを『貧血』という場合がありますが,ここで言う貧血とは別の病気です」

こんな誤解がある
  1. 日常語で「貧血」という場合,気持ちが悪くなって立ちくらみを起こして倒れる「脳貧血」のことも指す。一般の人は「貧血」という言葉からは,脳貧血の意味をまず想起する場合が多いので,医師の診断の「貧血」を,これと誤解する場合がある(67.6%)。この誤解を避けるために,「貧血」の診断の際には,病名だけでなく,病気の内容も説明しなければならない。
  2. 「貧血」というと,血液中の鉄が不足することによって起きる「鉄欠乏性貧血」が大多数なので,これを思い浮かべる人も多く,食事やサプリメントで鉄分を補えばよいと考える人がいる。貧血には,ほかにも様々な種類があることを説明し,自分は何に当たるかをしっかり認識させる必要がある。鉄分が不足していない人が過剰摂取を続けると肝臓障害などを起こすおそれもある。
混同を避ける言葉遣いのポイント
  1. 一般の人々の「貧血」の認知率は極めて高いが(99.7%),その意味を「赤血球が減る病気」と正しく理解している人は必ずしも多くない(理解率77.0%)。また,[こんな誤解がある] 1. に示した誤解が極めて多いので,「貧血」という言葉を単独で使うことは避けた方がよい。
  2. 「脳貧血」との混同を回避し,病院で使う「貧血」の意味を正しく理解してもらうために,「脳貧血」を持ち出して,それとの違いを説明するのも,効果的である。
  3. 貧血とは,赤血球の中にあるヘモグロビンという酸素を運ぶ色素が減少していたり,働かなくなっているための病気であることを,まず説明するとよい。
  4. 上記のような説明をしても誤解が消えないと考えられる場合は,「貧血」という言葉を用いないで,「血液が薄くなっています」「赤血球が少なくなっています」などと説明することも考えられる。
  5. 何よりも効果的なのは,検査結果をきちんと示しながら,説明することである。検査結果の見方,検査の結果注意すべきこと,必要な治療の方法などを合わせて説明すれば,誤解される可能性は小さくなる。
関連語

赤血球(類型B)

[説 明]
 「血液の中にあって,酸素を全身に運ぶ働きをしています。赤血球の中にあるヘモグロビンという物質に酸素を結び付けることで,運んでいます。血液中の成分のうちとても多くの部分を占めています」
[注意点]
 理科や保健の授業で学ぶので,比較的よく知られている言葉だが,詳しい働きなどは忘れている人も多いと思われる。赤血球がかかわる病気になった患者には,まず赤血球そのものについて理解してもらうことが望まれる。
©2008 The National Institute for Japanese Language