「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

設立趣意書
トップページ > 提案 > Ⅲ.類型別の工夫例 > 提案した語の一覧 > 41.動脈硬化(どうみゃくこうか)

41.動脈硬化(どうみゃくこうか)

(類型B-(2))もう一歩踏み込んで明確に説明する

[関連] 狭心症(きょうしんしょう)(類型B) 心筋梗塞(しんきんこうそく)(類型B) 脳梗塞(のうこうそく)(類型B)
 脂質異常症(高脂血症)(ししついじょうしょう(こうしけっしょう))(類型B) 血栓(けっせん)(類型B)

まずこれだけは

動脈の血管の壁が硬く,厚くなって,弾力を失った状態

少し詳しく

 「動脈の血管が,年齢とともに老化して,弾力性を失って硬くなった状態です。血管の内側に様々な物質がこびりついて狭くなったりして,血液の流れが悪くなります」

時間をかけてじっくりと

 「動脈の血管が,年齢とともに老化して,弾力性を失って硬くなった状態です。血管の内側に,悪玉コレステロールといわれる脂肪やカルシウムがこびりついて,血管が狭くなり,厚く硬くなった状態です。この状態が続くと,狭心症(→[関連語])心筋梗塞(こうそく)(→[関連語])脳梗塞(→[関連語])という危険な病気を引き起こすことがあります。原因は,喫煙,運動不足などの生活習慣によるもののほか,高血圧や脂質異常症(→[関連語])などです」

こんな誤解がある
  1. 「硬化」という言葉から「動脈の血管が硬くなること」だけをイメージしがちであり,血液の流れが悪くなることが引き起こす重大な病気に考えが及ばない人が多い。
  2. 年齢を重ねれば必ず起きる防ぎようがないものだという誤解がある。一方,若い人はならないという誤解もある(19.9%)。
言葉遣いのポイント
  1. 「動脈硬化」は,認知率(97.2%),理解率(92.8%)ともに極めて高い。しかし,動脈硬化が多くの危険な病気の原因になっていることは,必ずしも知られていないと考えられる。その危険性を正しく理解してもらえるような説明を加えたい。
  2. 血管を水道管にたとえ,コレステロールなどこびりつく物質をヘドロにたとえて説明するのも,分かりやすい。また,水道管の老朽化のイメージは分かりやすいので,これと同じような絵を描いて説明すると効果的である。
  3. 高血圧,脂質異常症(高脂血症),血栓(→[関連語]),狭心症,心筋梗塞,脳梗塞などとの関係を,相関図として示すと分かりやすい。
関連語

狭心症(類型B)

[説 明]
 「動脈硬化などにより,心臓の筋肉に酸素やエネルギー源を送る血管の血のめぐりが悪くなり,胸のあたりにしめつけられるような痛みが起こる病気です」
[注意点]
 「狭心症」は認知率94.2%と比較的高く,字面から心臓がしめつけられて苦しくなる病気だということは類推できる。しかし理解率は76.8%と低く,その原因が動脈硬化で血管が細くなることや,一時的に血管がぎゅっと縮んで細くなることによる血のめぐりの悪化にあることを理解している人は少ないと考えられる。動脈硬化の説明の際には,動脈が硬くなることによって起きる病気の一つとして,狭心症を例に挙げるのは効果的である。

心筋梗塞(こうそく)(類型B)

[説 明]
 「動脈硬化により,心臓の血管の血のめぐりが悪くなったり,狭心症が進行したりして,血が流れなくなり,心臓の筋肉が破壊されてしまう状態です」
[注意点]
 「心筋梗塞」という言葉は認知率が99.2%と高く,よく知られている。しかし理解率は80.2%と認知率と差があり,漠然と心臓の恐ろしい病気だと思われているようで,その原因が動脈硬化にあることはあまり理解されていないと考えられる。「動脈硬化」の説明の際には,動脈が硬くなることによって起きる怖い病気の一つとして,「心筋梗塞」も例に挙げたい。また,「梗塞」という言葉も難しいので,「つかえてふさがること」のように注釈を加えたい。

脳梗塞(類型B)

[説 明]
 「脳の血管が詰まり血液が流れなくなり,脳の細胞が破壊されてしまう状態です」
[注意点]
 「脳梗塞」という言葉は比較的知られていると考えられるが,その原因が動脈硬化にあることは理解していない人も多いと考えられる。「動脈硬化」の説明の際には,動脈が硬くなることによって起きる怖い病気の一つとして,「脳梗塞」も例に挙げたい。また,「梗塞」という言葉も難しいので,「つかえてふさがること」のように注釈を加えたい。

脂質異常症(高脂血症)(類型B)

[説 明]
 「血液の中の脂肪が,異常な値を示す状態のことです。『脂質』とは脂肪のことです。血液検査によって,LDLコレステロール(悪玉),HDLコレステロール(善玉),中性脂肪などの数値を総合して判定します。この症状になると,動脈硬化を進行させ,心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす危険性が高くなります」

血栓(類型B)

[説 明]
 「血管をふさいでしまう血のかたまりです。この血のかたまりが,心臓の血管をふさぐと心筋梗塞,脳の血管をふさぐと脳梗塞になります」
[注意点]
 「血栓」は認知率(94.6%),理解率(90.8%)ともに高いが,血栓が原因となって血が流れなくなることで重大な危険を招くことは,あまり知られていないと考えられる。この点をきちんと説明したい。
©2008 The National Institute for Japanese Language