「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

設立趣意書
トップページ > 提案 > Ⅲ.類型別の工夫例 > 提案した語の一覧 > 39.治験(ちけん)

39.治験(ちけん)

(類型B-(2))もう一歩踏み込んで明確に説明する

[関連] 臨床試験(りんしょうしけん)(類型B)

まずこれだけは

新薬の開発のための人での試験

少し詳しく

 「新しい薬を開発するために,人で効果や安全性を調べる試験のことです。動物実験などで効果や安全性が確かめられたものについて,人での試験に進みます」

時間をかけてじっくりと

 「新しい薬を開発するために,人での治療の効果や安全性を調べる試験のことです。製薬会社が開発する新しい薬は,厚生労働省の承認が必要です。この承認を受けるために行われるのが『治験(ちけん)』です。動物実験などで効果や安全性が確かめられたものについて,人での試験に進みます。『治験』は,『療の試』という意味です」

こんな誤解がある
  1. この言葉を初めて見聞きする人は,その人に合っているかどうか試験的に治療してみることと誤解したり(16.0%),「チケン」と耳で聞いても,漢字が思い浮かばなかったりする。
  2. 「治験(ちけん)」は国語辞典には,この言葉の古い意味である「治療のききめ」などと書かれている場合が多く,現在病院で使われている「治験」とは違う意味に受け取ってしまう危険性がある。
  3. 薬を無料で投与してもらえるものだと誤解する人や(14.2%),効果や毒性も分からない薬物を投与する人体実験のようなものだと誤解する人も(9.3%)いる。
言葉遣いのポイント
  1. 認知率(68.6%),理解率(63.0%)ともにあまり高くない。患者に説明するときには,その意味をはっきりと伝えたい。
  2. この言葉を使う場合は,「治験」と漢字に書き,「治療の試験」の意味であることを伝えた上で,開発中の新薬の試験であることをきちんと説明したい。
ここに注意

 治験(ちけん)に参加するかどうかを決めるのはあくまで患者であり,十分に説明を尽くした上で協力をしてもらうことが必要である。治療法の選択肢の一つとして治験を示す場合も,まずはあくまで治療の試験であることを理解してもらう必要がある。

関連語

臨床試験(類型B)

[説 明]
 「新しい薬や治療法などの有効性や安全性を調べるために,人間を対象として行われる試験研究のことです。この臨床試験のうち,新薬の開発を目的として行われるものを『治験(ちけん)』と言います」
[注意点]
 「臨床試験」は,比較的知られている言葉なので(認知率92.0%,理解率85.4%),上記の説明のように「治験」を説明する際に持ち出すのもよい。
©2008 The National Institute for Japanese Language